第42話
世界各国の重鎮が押しかけ、世界各国の精鋭たちが集まる今のロワール小国は世界随一の戦力を抱えている状態であり、学校対抗試合の警備は万全。
長い歴史の中で一度たりとも学校対抗試合における襲撃はなかった。
ここを一つ爆発してやるだけで世界の勢力均衡が一気に変貌するというのにも関わらず、である。
それだけ警備が万全であり、どのような組織による襲撃も未然に防ぎ、何もせずただ立つだけで絶対の強さを見せて心を折ることで、そもそも襲撃の計画を立てる気力を奪うという圧倒的な警備。
決しては学校対抗試合中に襲撃されることはない。
そんな不敗神話が世界の常識となっていた。
だが、今日。
その不敗神話は潰えた。
「……なんで、お前が」
学校対抗試合の決勝戦会場を単独で襲撃するという暴挙に出た一人の少年を前にする僕は呆然と口を開く。
驚きは不敗神話が潰えたことではない……この不敗神話が潰えることは予め知っていた。
驚きの矛先は出来事ではなく、それを起こした人間。
「なんだ?その口ぶりには。まるで俺のことを知っているようじゃないか」
時空間魔法の一つである転移を使って僕の前へと現れた少年は僕の言葉に首をかしげながらこちらへと視線を送ってくる。
「……ライト・ヘルイン」
だが、そんな彼の言葉に何の反応も示すことが出来ずに僕はただただ少年の名前を口から漏らす。
「……ッ!テメェ、本当に何なんだ?んで、俺の名前を」
知っているに、決まっているじゃないか。
ライト・ヘルイン……その名はこの世界における人類の希望であり、魔王を切り裂く刃であったはずなのだから。
「なん、で」
人類の希望であったはずの彼が。
光が……闇へと堕ち、まるでゲーム本編のアレスのように魔族へと堕ちた姿を見せるゲーム本編における主人公が学校対抗試合の決勝戦会場へと襲撃を仕掛けてきたという事実を前に僕はどうすれば良いのだろうか?
ゲームの主人公が敵となったという事実を前に。
「……ッ」
どうしようもない現実を前にしながら僕は覚悟を決めた。
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