第43話

 ライト・ヘルイン。

 ゲームの主人公として登場する彼は魔王を倒す勇者に相応しいチートスペックを持っていた。

 

 ありとあらゆるものを切り裂く世界最強の宝具たる聖剣に選ばれるだけではなく、魔法に関するありとあらゆる才を生まれながらに持ち、当然格闘センス並びに身体能力も抜群。

 一切隙のないチート性能を持ち、単独での魔王討伐を平然と成し遂げられる怪物がライトである。

 そもそもゲーム自体がライト層に向けて作られたこともあって、ゲーム難易度がイージーだったのだ。


 それゆえの主人公の圧倒的な強さ……これが敵に回るとか最悪にも程があるのではなかろうか?


「……単独で乗り込んでくるなんて随分な蛮勇を持ち合わせているようだ。凡夫」

 

 二本の短剣を手に持つ僕はそんな主人公君であるライトの前に立つ。


「……ちっ。嫌な野郎だ……こっちを見下してくる視線しかり俺の名前を一方的に知っていることしかり」


 何故、こうなったか。

 それを考えるのは後にするとしよう……どうせ考えることは無限にあるのだから。

 

 ライトは未だ成長過程だろうし、彼最大の武器である聖剣もない。

 今なら僕が勝てる可能性も十二分にある。


「悪鬼憑依」


 未だにどういう能力で、なんでこんなものが使えるのかもわからない僕の切り札である『悪鬼』を発動。

 元々はどこぞのスタ〇ドのように傍で様々な力を行使してくれる存在であった悪鬼を自分の体へと憑依させることで僕のスペックを大幅に強化する。


「オーエンス卿よりかは幾分か骨がありそうだ……くくく。楽しませてくれよ?」


「……油断していればいいものを」

 

 二つの短剣を構える僕に対して、ライトもゲームにも登場していた一振りの魔剣を異空間から取り出して構える。


「……ッ」

 

 ちょうどこの頃だっただろうか?

 学校対抗試合に出ることが身分的な理由で叶わず、その代わりとして一部の悪役であったアレス・フォーエンスと死闘を繰り広げたのは。

 僕はゲームでのことを頭の片隅で思いながら……地面を蹴った。

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