第44話

 学校対抗試合が決勝戦の会場でアレスとライトがぶつかり合い出した頃。

 その他の場所でも大騒動が巻き起こっていた。


「クソッ!何なんだ、こいつら!」


 褐色の肌に頭より伸びる角と臀部より伸びる尻尾。

 決して同じ人族と言える見た目ではなく、また、多くの人に知られているメジャーな亜人でもない存在。

 そんな彼ら、彼女らが何百という数でロワール小国を襲撃し、多くの被害をもたらしていた。


「わからん!だが、手を動かせ!これ以上被害を出さすな!既に貴族の方々も動いておられる!そんな中、被害を拡大されるわけにはいかない!」

 

 ロワール小国の地は人類の歴史の中でも重要な国の後継国家であり、その首都には重要文化財が数多くある。

 この地の破壊などそう許せるはずもなく、ましてやこの地の防衛には世界各国の騎士だけでなく貴族も加担している。

 この場での敗北は人類全体の敗北であることを示される。

  

 圧勝。

 求められしは圧勝であった。


「亜人如きがァ!!!」

 

 何百という数に加え、個人個人が強力。

 厄介な敵、亜人ではあるものの、人類側の戦力は数万を超え、圧倒的な武を持つ者も数多くいる。

 敵の数は明確に減っていってはいた。

 だがしかし、それでもすべての敵を倒せてはいなかった。


「……煩わしい羽虫が!」


「待て!自分らで街を大きく破壊するような魔法の数々を使うな!俺等が破壊してどうする!」

 

 街の保全のことも考える必要がある。

 故に大規模な魔法は使えず、全力で逃げ惑う敵を確実に倒すのに苦戦しているような状況であった。


「……厄介な」

 

 街への被害並びに人的被害。

 少なくない犠牲を出し、泥沼の戦いへと落ちていく現状に多くのものが歯噛みしながら武器を取り、魔法を発動させるのであった。


 ■■■■■


「ふむ……あれが、魔族か……なるほど。あれは、人類の脅威足り得るか……」


「皇帝陛下?如何がなさいましたか?」


「なんでもないわ」


 騎士並びに貴族の戦いを眺める上位者。

 世界の王や皇帝は未だ動いてはいなかった。

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