第38話

 黒い炎に包まれたバジリスク。


「これ、どうやって素材剥ぎ取るの?」

 

 バジリスクの体は丸焦げどころの話ではまるでなく、普通に体がどろどろに溶けて、ぐちゃぐちゃとなってしまった肉塊だけが残されている。

 ところどころ焦げて黒くなっているこの肉塊を見てバジリスクであるとわかるものはいないだろう。


「うぅ……済まない。初めての戦闘、初めて見せる我が魔法……テンションが上がりすぎて本来から逸脱した威力の魔法を発動してしまった。ごめんなさい」

 

 この惨状を作り出したキリエは謝罪の言葉を口にする。


「……一応魔石は取れるだろうけど、他の素材は駄目だな。全部溶けて混ざっている。天火竜で欲しい素材は魔石だけだよね?」


「うむ。そうである」


「なら、天火竜のときはその魔法使っていいけど、他の魔物と戦うときはその魔法禁止ね。もっと威力が優しいのを使って」


「わかりました」

 

 キリエは僕の言葉に頷く。


「にしてもすごいわね。バジリスクをここまでにする魔法だなんて始めてみたわ」

 

「ふふふ……当然です!我は世界に選ばれし特異なる者!これくらいは当然なのです!」

 

 リーリエに褒められたキリエはパァーと表情を輝かせて杖を回してポーズを取り、ドヤ顔で口を開く。


「まぁ、確かに魔法の威力は高いね。これだったら天火竜の討伐は早く済むかも」


 キリエは足手まといになると思ったが……ここまで強いのであれば足手まといにはならないだろう。

 それどころかうちのパーティーに足りなかった最後のピースとなるくらいだ。


「おぉ!それであれば僥倖である」


「うん……このまま数時間一緒に戦って、明日明後日で準備を整えてその次の日に天火竜が住まう火山に行こうかな」

 

 天火竜が住まう場所は既にわかっている。

 今からすでに何十年前にメルボラン近くの火山を天火竜が住まいとしていて、ちょくちょく周りの村に被害を与えている。


「あぁ……とうとう、我が母を治せるのだな」


「うん。天火竜ごとき、さっさと倒してキリエのお母さんを治してあげようね」


「はい!」


「ふふ……良いわね。私も頑張らないと。家族は大切だからね」


「私も頑張ります!」


「期待しているよ。ラレシア」


「はいです!」

 

 僕の言葉にラレシアが元気よく頷いた。

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