第37話
「走る。奔る。趨る。闇を超え、漆黒を超え、深淵すらも超越さし世界を呑み込み、世界を滅ぼさんと欲す闇の王にして天魔の主にして、偉大にして尊大で、棘々しい終末のモノよ。遥か北、遥か南、遥か東、遥か西、遥か世界で望み、遥かなる者たる我に決して終わりなき力と思い、世界を呑む闇をここに。我はただの個。我はただ見る者。我はただ書く者。決して終わりはなく、決して闇には屈さず。決して終わらず。闇を、闇を、闇を。我以外を呑み込むし消えることなき闇よ……」
魔法については色々と勉強していて詳しい僕であっても聞いたこともなく、そして信じられないほどに長い詠唱を唱えるキリエの前で、彼女の方に魔物が行かないよう魔物を食い止める僕とラレシア。
「ど、どれくらい耐えれば……?」
「わからない。ただただ耐え続けて」
疑問の声を上げるラレシアに対して僕はそっけなく返す……キリエの詠唱が何時終わるのかなど、僕もわからない。
「わ、わかりました……」
僕の言葉にラレシアは少しだけ頬を引きつらせながらも頷く。
「いえ、もう十分です」
そんな僕とラレシアの会話を聞いていたキリエが割り込んでくる。
「もう既に準備は完了しました。お待たせして申し訳ありません……」
高々と杖を掲げ、やけにカッコつけたポーズを取るキリエが言葉を話す。
「それでは御覧あれ。我が秘技を」
キリエは僕とラレシアがずっと戦っていた巨大な蛇の魔物であるバジリスクへと杖を向ける。
「避けるよ!」
「はわっ!?」
僕はラレシアを持ち上げて疾走。
キリエの後方へと一瞬で移動する。
「ふふふ……ご配慮感謝します。闇の炎よ、全てを飲み込め『アマテラス』」
太陽の影。
どこかの世界のすべてを照らし、恵みを与える太陽の光の影が、暖かく明るい光を放つ陽の光ではなく……何もかもを飲み込んでしまうような黒い、黒い光を放つ黒い炎が。
キリエの巨大な杖より放たれ、何もかもを飲み込んでくる。
黒い炎がバジリスクを呑み込み、その肉体を焼いていく。
「ぎしゃァァァァァァァァ」
体を黒い炎で焼かれるバジリスクは悲鳴を上げて地面を転がる。
「何、あれ……」
「ふふっ。この我のように特別な星の元にでも生まれてぬ限り、決して理解出来ぬ果てなる炎よ」
「……火力不足は解消だな、これ」
黒い炎はいともたやすくバジリスクの体を溶かし、その生命に終わりを与える。
圧倒的な攻撃力、その火力。
うちのパーティーの欠点であった火力不足が解消されたのを僕は感じたのだった。
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