第39話

 空で太陽が光り輝く頃。


「ふたりきりになるのはだいぶ久しぶりな気がする」


 僕とリーリエは街へと買い出しにやってきた。

 明後日に迫る天火竜討伐のために出発の日のための買い出しだ……キリエが増えた分の買い足しをしなくてはならない。


「あぁ……確かにそうね」

 

 僕の言葉にリーリエが頷く。

 ラレシアが僕たちのパーティーに入ったのはかなり前だ。

 それからは三人で行動していたので、ふたりきりは本当に久しぶりだ。


「とはいえリーリエと二人で居た時間もそんな長くないんだけど……ゴブリンの巣穴での戦闘が鮮烈すぎるだけで」


「そうね……あのときはきつかったわね。信じられないほど。あれを超えるほどに大変なのは私の人生でもうないかもしれないわね」


「……僕も同意」


 同意したい。

 同意させて欲しい……ッ!


「っと、テントは小さいので大丈夫よね?」


「大丈夫じゃないか?寝るだけなんだし、キリエなら文句も言わないだろう。貴族だってテントで寝れるよ」


「……貴方が言うと説得力が強いわね。じゃあ、これでいいかしら」


「うん。良いと思うよ」

 

 冒険者がよく使うコンパクトサイズで頑丈なテントを手に取ったリーリエの言葉に頷く。


「後はライトと……天火竜と戦うための耐火装備かしら?」


「他にも細々とした道具が必要かな。キリエのコップとか」


「あぁ、そうね。人数分用意する必要があるか……荷物大丈夫かしら?」


「僕の時空間収納がもっと大きければ良いんだけどねぇ。ラレシアの道具でいっぱいいっぱい」


 時空間魔法。

 今、僕が勉強中の魔法の一種である『時空間収納』。

 それは空間を捻じ曲げて小さな亜空間を作り、そこに様々なものを収納できるようにする魔法だ。


 実に便利なのだが、あまり収納できる量がなく、巨大なラレシアの道具を仕舞っただけでもうパンパンだ。


「まぁ、荷物に限ってはキリエも持つでしょう……あの子、前出ないし」


「それもそうね……あの子の分のカバンも買っておきましょう」

 

 僕とリーリエは互いに必要なものについて話し合いながら買い出しを進めた。

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