第7話

 依頼の詳細を孤児院の方から聞いてきた僕は依頼に向かうための準備を進めていたリーリエたちへと合流した。


「孤児院を長年支えてきたシスターが病で倒られてしまっただなんて……これは子供たちの為にも必ず依頼を達成しなければなりませんね」

 

 いつもの中二病全開さに成りを潜めさせたキリエがしみじみと言った表情でそう告げる。


「そうだね……この依頼は必ず達成しなきゃいけない」

 

 病床につく母を持つ僕もキリエの言葉に深々と頷く……いい加減僕も実家のほうに帰らないとな。


「二人とも気合は十分ね。それで?氷結花の採取は一本で良いのよね?」


「うん。そうだね。病気に罹ったのはシスターのおばあちゃん一人だけだし。それでも氷結花自体は需要が高いから出来るだけ多く採取しておこ……採取してから一か月で効果がなくなっちゃう曲者の花だけど、それでも必要になることがあるかもしれない」


「そうね。案外、発高熱に罹る人は多いし、必要とする人が一か月以内に出てくる可能性もなくはないわ」

 

 僕の言葉にリーリエが頷く。


「リーリエ様。今回、馬車を引くのは私で良いんですよね?」

 

 馬車の手入れをしていたラレシアが最後の確認としてリーリエへと尋ねる。


「えぇ。馬は洞窟の中に入ってくれないから、今回はラレシアに任せることになるわ。大変だと思うけど、大丈夫かしら?」


「問題ありません!バッチリと運んで見せます!」


「ありがと」


「それで?僕が異空間収納にしまえば良いのはこれだけで良いの?」


「えぇ、良いわ。他は自分たちで持つわ」


「おっけー」

 

 僕はあらかじめリーリエたちが分けて用意してくれていた僕の異空間収納で仕舞っておく荷物をすべて仕舞う……結構空きあるな。

 僕の異空間収納も随分と広くなったものだ。こんなところからも僕の成長がわかる……。


「洞窟までは遠いし、いずれにせよ野宿は数回することになるでしょう……もう昼過ぎだけど、早速出発してしまおうかしら?」


「ん。別に良いんじゃない?もう準備できているなら問題ないと思うけど」


「出来るだけ早く助けてあげるとしましょう……病魔は罹る側も見守る側も重く、辛い」


「頑張ります!私の体力は一杯ですから!全然今からでも問題ありません!」


「ありがと、ラレシア。それじゃあ、もう出発してしまいましょうか」

 

 全員分の同意を得られたリーリエはそう宣言した。

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