第6話

 ボロボロの孤児院。

 外観は信じられないほどにボロボロだったが、内観は普通にボロボロ程度で済んでいる。

 まだ許せるボロさ加減だ。


「ん、リリアねーちゃん。その隣の男の誰ー?」


「リリアが男を連れ込んできたー!」


「わー!」


「わぁ……やっぱり大人だぁ!」

 

 少女の後について孤児院の中に入った僕を出迎えたのはたくさんの子供たち。

 男である僕を連れてきた少女を周りの子供たちがはやし立てる。


「ちょっと!あなたたち、黙りなさい!大事なお客さんよ!」

 

 そんな子供たちに対して少女は怒鳴り声をあげ、さっさと散るようにジェスチャーを送る。


「キャー!」


「リリアねーちゃんが怒ったー!」


「逃げろー!」

 

 それに対して子供たちは悲鳴を上げて逃げる。


「ごめんね……うるさくて」


「いやいや、みんな元気で微笑ましいよ」


「そう言ってくれると嬉しいわ」 

 

 僕と少女の年齢は共に十代である。


「応接室はこっちよ。こんな広い部屋で話すのもなんでしょ」

 

 少女は子供たちがいた広い部屋を抜け、一つの個室の部屋に僕を通してくれる。


「ありがと」


「椅子もちょっとボロボロで座り心地は良いと言えないけど……我慢してくれると嬉しいわ」


「いやいや、全然かまわないよ。あるだけで満足だよ」

 

 通された応接室で僕と少女は共に向かい合って腰を下ろす。


「それで依頼のことだけど氷結花を取ってくれば良いんだよね?本数の指定とかあるかな?」


「……その前に一つ。本当に受けてくれるんですか……?私たちが提示した依頼料は難易度に見合う物ではないはずがですが……」


「うん。別に僕たちのパーティーはそこまでお金に困っているわけじゃないからね。氷結花を欲しているってことは誰かがあの花じゃないと治らない『発高熱』か何か発症しちゃったんでしょ?」


「……はい。ずっとここの孤児院を支えてくれたシスターのおばあちゃんがその発高熱に罹ってしまって……」


「僕たちのパーティーは身近な人が病気に罹ってしまったって話を抱えている人が多いからね。似たような境遇を持つ人は助けてあげたいのさ。僕たちの実力であればそこまでの難易度ではない。どんな報酬であったとしても受けてあげるよ」


「……ッ。ありがとう、ございます」


「いいよ、いいよ、気にしなくて。それで、依頼の詳細について聞きたいんだけど……罹ったのは一人で良いのかな?」


「えっ。あ、はい。そうです。罹ったのはシスターのおばあちゃんだけで───」

 

 僕は依頼の詳細について話してくれる少女の言葉に耳を傾けた。

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