第5話

「ここかな……?」

 

 依頼の詳細について聞くため、僕は一人で依頼書に書かれていた孤児院へとやってきていた。

 他のパーティーメンバーは依頼のための準備を行っている頃合いだろう。


「……チャイムがない。鈴もない。ノックで良いのかな?」

 

 風化し、ボロボロになってしまっている孤児院の前に立った僕はおそるおそる扉をノックする。

 うっかりノックで扉を壊してしまいそうで普通に怖い。

 

「は、はーい!」

 

 扉をノックした音……僕が魔法を使って少しばかり音が更に響くようにしたノックの音に反応してか。

 少女が声を上げながら扉を開け、僕へとその姿を晒す。


「え、えっと……何の用かな?僕」


 年齢は十代後半だろうか?

 僕よりも背丈が高く、恐らく僕よりも年上であろう少女は扉の前に立っている僕を見て若干困惑しながらも僕へと目線を合わせるように身を少し屈めながら口を開く。

 

「依頼」

 

 そんな少女に対して僕は一枚の紙を取り出し、それを彼女へと見せる。


「僕はこの依頼を受けることにした冒険者だよ。ちゃんと受領済みであることを示す受付嬢さんのサインもここに」


 その紙は冒険者ギルドの方で剥ぎ取ってきた孤児院からの依頼の紙であり、この紙には受付嬢さんが僕たちのパーティーが依頼を受けたことを確認し、それを認可したことを示す受付嬢さんのサインが書かれている。 


「えっ……?君、が?」

 

 僕の言葉を聞いた少女が困惑の声を上げる。

 まぁ、その反応も当然だろう。自分よりも年下の少年が依頼を受けたのだとのたまうのだ。

 普通は正気を疑う。


「そー、僕がだよ」

 

 そんなことを思いながらも僕は困惑する少女の言葉に頷く。


「え、えっと……大丈夫、なの?」


「問題ないよ!僕はこんな成りでも結構強いからね……それよりも外は寒いから中に入れてくれない?」


「あっ!そうね。ごめんなさい、うっかりしてたわ。どうぞ、中に入って……とは言ってもうちの孤児院はもうボロボロだから隙間風入りたい放題で中もかなり寒いんだけど」


「大丈夫ですよ」


 寒いって言ってのは中に入れてもらうための方便で、実際のところは寒くないし。

 僕は魔法を使って自身の周りの体温が自分にとって最も過ごしやすい気温になるよう調節している。


「どうぞ、入って」


「お邪魔します」

 

 僕はボロボロの孤児院の中へと入り、先に進む少女の後を追って孤児院の中を進んだ。

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