第8話

 ラステンを出発してから三日ほど。

 僕たちはようやく氷結花が繁茂している場所がある洞窟へとたどり着いていた。


「洞窟の中でもこのまま私が馬車を引いていって大丈夫なんですよね?」


「うん。大丈夫だよ。道中の森と同じように馬車の方へと近づいてきた魔物は僕が倒していくから」


 馬車を引くラレシアの言葉に僕は頷く。

 その言葉を聞いた彼女は躊躇なく洞窟の方へと足を踏み入れて前へ前へと進んでいく。


「……この我が魔法使いのはずなのに、その座をノームへと奪われた気分です」


「細かな魔法の発動などは僕の得意分野だからね。僕はあくまで近距離戦闘タイプ。大規模な魔法を使うことはあまりなく、基本的には無詠唱でポンポン魔法を使っているタイプ。弱い魔物が寄ってきている程度であれば僕の方が早いよ」

 

 ここまでの道中並びに洞窟の中で、魔法を使って大活躍している僕を見て若干意気消沈してしまっているキリエに対して僕は声をかける。


「強い魔物への高火力魔法は任せたよ」

 

「おぉ!それは任せ給え!我が業火、洪水、暴風は偉大なる壁にのみ向けられる!」

 

 僕の言葉にキリエは急にテンションをぶち上げて高らかに告げる……クソチョロ。


「……弱い魔物でもないんだけどね。普通の冒険者であれば単純な脅威よ」


「リーリエでも倒せるでしょ」


「まぁ、たしかにそうだけども」


「え?リーリエも戦えるんですか?」


「問題なく戦えるわよ。今は回復の方に専念しているけど……別に今私が前線に出てもそこまで見劣りしないんじゃないかしら?」


 キリエの意外そうな言葉にリーリエが答える。


「確かにあまり見劣りしないと思うよ。流石にもう僕の方が強くなっていると思うけど」


「……ノームの成長速度は異常よ」


「成長期だからね」


「大して身長は伸びていない癖に」


「はっ!待て貴様ァ!今、言ってはならぬことを口走ったな!?」

 

 僕はボソリと呟かれたリーリエの言葉に思いっきり噛みつきに行く。

 

「ノームに限っては背が低いほうが有利なような気もしますが……」


「それはそれ。これはこれだよ……僕の戦闘スタイル的に小さい方が撹乱出来るし、僕の戦い方自体も背が小さいのに合わせているけど……それでも僕は大きくなっても問題なく戦えるという自負があるよ」

 

 僕はキリエの言葉にそう返す……元より幼少期から戦っているのだ。成長に合わせて戦闘スタイルを変えられるようにはしている。


「……僕に対する背が小さいいじりは禁句だ」

 

 何故か、あまり伸びてくれない僕の背丈に歯ぎしりする僕は魔法を使って馬車の方へと近づいてくる洞窟の魔物を蹴散らし、洞窟の奥へ奥へと進んでいった。

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