第20話

 ゴブリンキング。

 普通のゴブリンと比べて三倍ほどの背丈を持ち、肌が赤黒く染まっているもはやゴブリンとは思えない見た目をしているゴブリンキング。


「よっ……ほッ!」

 

 僕はそんなゴブリンキングと向き合い、武器と武器をぶつけ合っていた。

 ゴブリンキングの手にある大剣と僕の手にある二本の短剣が火花を散らし、鈍い金属の音を上げる。 


「……流石に強い、なッ!」

 

 僕は地面を駆け抜け、地を蹴り、壁を蹴り、天井を蹴りながら進む。

 

「ガァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアッ!」

 

 僕の方へと振るわれる大剣を回避し、ゴブリンキングの背後へと移動した僕は黒い炎をまとった短剣で背中を斬りつける。


「ガァッ!?」

 

 すべてのものを焼き焦がす黒い炎をその身に喰らってもなお、倒れる気配のないゴブリンキングを見ながら僕は冷や汗を流す。

 ……どれだけタフなんだよ、こいつ。

 既に何回斬りつけたと思っているッ!


「────シッ!」

 

 自分に向けて振るわれるゴブリンキングの大剣を短剣で受け流し……それでもなお残る衝撃で僕は後ろへと下げられる。


「ふぅー。一発でももらったらヤバいな、これ」

 

 一撃で結界が壊され、それでも勢いを殺せずにそのまま死ぬ……なんと事にはならないと思うが。

 それでもかなりのダメージを食らうことは避けられないだろう。

 ワンチャン一発で結界が消し飛ぶ。


「……僕だけでの勝利はキツイな」

 

 視線をゴブリンキングの方からゴブリンジェネラルなどと戦っているリーリエの方へと視線を送る。

 後、少しか。


「僕としては耐えるだけかな」

 

 僕はタンクじゃないんだけどねぇ。

 どちらかというと火力と速度でゴリ押す遊撃タイプ……自分に似つかわしくない時間稼ぎという役割を背負った僕は内心で苦笑しながら再び意識をゴブリンキングの方へと向ける。


「ガァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアア!」

 

 続々と自分の配下がリーリエに倒されていく現状を前に焦り、攻撃の手を強めていくゴブリンキングを速度で上回って翻弄し、体に続々と傷をつけていく。


「……ッ」

 

 受け流して、避けて、斬りつけて。

 それをただひたすらに繰り返して、繰り返して、繰り返す。

 火花が散り、金属同士がぶつかる音が響き、肉の焼ける匂いが漂う。


「ごめん、待たせた」

 

 その先で。

 ゴブリンジェネラル他、多くのゴブリン上位種を倒しきったリーリエが僕の救援に駆けつけてくる。


「……ほんと、マジで待ったよ」

 

 僕は自分の隣に立ったリーリエを前に深々と言葉を漏らした。

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