第34話

 開会式も何事もなく無事に閉会し、その午後。

 午前中で終わりの開会式が終わったあとは特に予定もないのでフリー、自由行動である。


「あ、久しぶり。よく来てくれたね」

 

 自由行動の時間ではあるものの、ロワール小国の首都ロールには多くの人間が押しかけており、今頃街の中は初詣時の明治神宮の如き人の多さとなっていることだろう。


 そんな最中において街に繰り出すつもりはない。

 やはり宿屋でのんびりするに限る。


「……さ、さすがは公爵家ですね。すっごく豪華なところです」

 

 だが、一人だと寂しいのでまだロワール小国に入国したばかりであろうシャルルを自室に呼びつけていた。


「ん?なら、シャルルも泊まる?多分、取ったは良いけど使い道がなくて空いている部屋が三、四つあると思うから」


 大量に連れてきている使用人のためもとい、その他様々な用途のためにかなり多めに取っていた部屋がかなり余っている。

 シャルルにその一室を分け与えても何も問題はないだろう。


「いやいや!大丈夫です!!!こんなところじゃ逆に眠れません!」


「こういうところだと備品は馬鹿みたいに頑丈だし、どんなことをしようとも一流の魔法使いが使う魔法で綺麗にしてくれるから逆に何の心配もいらないんだけどね?」


 ロワール小国は観光に力を入れまくっている国だ。

 当然宿屋の豪華さとその接客の丁寧さにサービスの良さはこの世界でも随一である。


「そ、そうだとしても無理です……落ち着けません」

 

 僕の言葉をシャルルは首を振って否定する。


「……失礼します」


 そんな最中、再び僕の部屋の扉が開く。


「あっ、マリア様……こんにちわ」

 

「こんばんわ」


「こんにちわ、です」


 扉を開いたのはマリア様であり、彼女はおずおずと部屋の中へと入ってくる。


「よし……これで揃いましたね。二人は昼食食べましたか?」


「いえ、まだです」


「あっ……私もまだです」


「なら良かったです。昼食用意してもらっているから、みんなで頂きながら学校対抗試合の作戦でも建てましょう……僕だけではなく二人にも活躍してもらいたいですから」

 

 僕は部屋にやってきてくれた二人へとそう言葉を告げた。

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