第48話

 学校対抗試合の最期は波乱に満ちたものとなった。

 決勝戦に関しては当然中止……ロワール小国の襲撃を受け、自国へと帰った国も数多くあり、トンロ皇国もその一つ。

 相手がいなくなってしまったのに出来るはずもないだろう。

 学校対抗試合は襲撃後、なぁなぁな感じで何もなく終わってしまったのだ。


 ライトとの死闘の後。

 まぁまぁの致命傷を負いはしたが、ちゃんと回復した……一時間ほどで。


「ふぅー。ありがたいけど、みんな心配性にも程があるんだよなぁ」

 

 僕の事を心配し、集まってきたフォーエンス公爵家の面々から見事逃げおおせた僕は一人、廊下を歩く。

 僕の隣を通り抜けていく人たちは魔法を使い、己の存在感を消している僕に気づかない。


「……」


 奥へ奥へと進み続ける僕の道。

 ロワール小国に残された巨大な王宮……学校対抗試合のときにのみ開かれ、各国の王族並びにその従者たちしか立ち入ることのできないその王宮を進んでいく僕。

 元々人通りが少なかった僕の道はいつしか、完全に人の通りがなくなった静かな空間へと変わる。


「……」


 タレシア王国が如き強大な大国、ドレシア帝国。

 頂点に立つ皇帝が絶対の権限を持つ絶対王政であり、圧倒的な軍事力で持つ軍事大国。


「やっほー、元気していた?皇帝陛下」


「うむ。我は息災である……アレスも息災のようで何よりだ」

 

 誰も入ることのない王宮の奥の奥に存在する一つの小部屋へと入った僕は。

 既に小部屋の中にいたドレシア帝国の頂点に立つ皇帝陛下へと声をかける。


「さて、それでは二人で悪巧みを始めようではないか……世界を作り変える、のぅ」


 僕は心底楽しそうに笑う皇帝陛下を前に苦笑を浮かべながら彼の前に腰を降ろした。

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