第47話

 僕の切り札はいつだって悪鬼くんである。

 腹を貫かれ、大きく出血する僕を受け、悪鬼くんは行動を開始。

 勝手に僕の体から悪鬼くんが抜け出し、ライトへと一切の容赦なく襲いかかる。


「お、おぉ!?」

 

 悪鬼くんの攻撃は僕に当たらない。

 僕に抱きつかれるライトにのみ当たる形で悪鬼の攻撃が繰り替えされる。


「……ざ、ぁ!?クソがァッ!!!」

 

 悪鬼の攻撃を受けるライトは悪態をつきながら僕の体を殴り、殴り、殴り……逃げ出そうとするが、それを僕は許さない。


「は、ははは。そう簡単に逃さないよ?」

 

「クソッタレがッ!」


 剣を腹に突き刺され、血を流しながら逃げ出そうとするライトの攻撃を受ける僕と悪鬼の攻撃を受け続けるライトの我慢比べ。


「……んっ、クソ」


「はぁ……はぁ……はぁ……く、クソ……がぁ」

 

 我慢比べ。


「ふぅー、ありがとう。悪鬼」

 

「……」


 それに勝ったのは僕であった。

 完全に四肢から力を失い、心臓の音を止めたライト……念には念をということなのか、容赦なく既に亡くなったライトの首を引きちぎって捨てた悪鬼へと感謝の言葉を口にし、抱きしめていたライドの体を離す。


「……クソみたいな戦いだな。全然スマートじゃないし、終始劣勢だった。決着の方法なんて最悪だし……はぁー」

 

 地面に倒れ伏した僕は自分の戦いぶりを振り返り、ため息をつく。

 既に街の方からも戦闘音は聞こえていない……しっかりと魔族による襲撃は跳ね返せたのだろう。

 これで学校対抗試合は終わりだ。


「思ったよりもハードな学校対抗試合になったよ……クソッタレが」

 

 ゲームでも学校対抗試合が魔族によって襲撃されるイベントが起き、決勝戦が中止となったと語られていた。

 ライトが敵として出てきたせいでゲームよりも遥かにハードとなった学校対抗試合を乗り越えた僕は瞳を瞑る。


「……ぁあ、これからが」

 

 これから自分を襲うであろう数々の試練を想像し、何もかもが嫌になった僕はそのまま意識を暗転させ、現実から逃げ出した。

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