主人公に殺されるゲームの中ボスに転生した僕は主人公とは関わらず、自身の闇落ちフラグは叩き折って平穏に勝ち組貴族ライフを満喫したいと思います

第42話

　何故、天火竜が急に僕たちへと襲撃を仕掛けてきたのかはわからないが……戦端が開かれた以上、僕たちは死力を尽くして戦うしかない。

「ラレシアッ！二人は任せた！」

「了解です！」

　僕は天火竜の前に立つラレシアにリーリエとキリエを任せて跳躍。　

　地面に足をつける天火竜よりも上の位置を取る。

「『亜空切断』」

　僕の努力の結晶……現在の僕の到達点。

　短剣で触れたものを亜空間へと飛ばす……通常の物理法則が通用せず、僕ですら理解出来ていない独特の空間へと。

　「……ギャァァァァァァァ！？」

　己の魔力量のうち、約五割もの量を込めて発動したその魔法で狙ったのは天火竜の翼の付け根。

　二度、空を飛べぬよう片翼を付け根から斬り落とす。

「首は無理だな……」

　分厚く、膨大な魔力によって守られる天火竜の首へと攻撃を仕掛けるのは無謀と判断した僕はその他の部分を狙っていく。

「……」

　手にある二本の短剣と魔法。

　僕の持つありとあらゆる攻撃手段でもって天火竜へと攻撃を叩きつけ、その身を護るウロコを削っていく。

「ガァァァァァァアアアアアアアアアアアアアア！」

　これまで僕に攻撃されるだけであった天火竜が強引に体をよじらせて僕の方へと顔を向け、竜のブレスを放ってくる。

「ほっと」

　それを転移で回避した僕は竜の腹に向かって短剣を突き刺す。

「……ッ」

　その状態で僕は大地を駆け抜け、腹を斬り裂いていく。

「ガァッ！」

「残念」

　自分の下にいる僕を潰そうと地面へと自身の腹を叩きつける天火竜……だが、僕は再び転移魔法で天火竜の上へと転移していた。

「闇の炎よ、全てを飲み込め『アマテラス』」

　天火竜が僕の対処に手こずっている間にキリエが詠唱を済ませ、魔法を発動する。

「ガァァァァァァァァァァッ！！！」

　バジリスクをドロドロに溶かしたキリエの黒い炎が天火竜を覆う。

「あっつ」

　黒い炎のせいで近づけなくなった僕は慌ててラレシアたちの元へと転移する。

「おかえりなさい……なんか、その凄かったですね」

「……あれだけ転移を繰り返して魔力大丈夫なの？」

「僕の魔力量的には何百回転移しても尽きないから。よゆー」

　心配するリーリエの言葉に対して僕はそう言葉を返す。

「僕よりラレシアだよ。ラレシアは大丈夫？」

　僕は天火竜の攻撃を全て避けたが、ラレシアはヘイトが僕の方へと向くより前はずっと攻撃を正面から受け止め続けたのだ。

　彼女のほうが心配。

「リーリエ様の回復魔法のおかげで大丈夫です！」

「それなら良かった」

「ふわっはっはっは！燃えよ！燃えよ！我が深淵の炎でぇ！」

　ハイテンションで高笑いを上げるキリエを横目に僕は一切油断なく天火竜の方を見続けた。