第41話
馬車で荒れた道を進むこと数時間。
僕たちは太陽の日が隠れ始めてきた夕方にようやく天火竜の住まう火山の麓にまでやってきた。
「今日は一旦ここで野営。天火竜の討伐は明日になるかな?」
馬車を止め、馬車から外へと出て地に足をつけた僕は口を開く。
「えぇ。そうね……キリエも疲れたでしょうし、夜の暗闇で戦うのは少々危険だもの」
「休憩!」
「ふっ……夜が来る。全てを包み込み、静寂の祖が訪れる闇夜か。この夜、この闇、この暗さだけが我に安息を齎す……」
各々のつぶやきに耳を傾けながら僕は時空間収納の方から次々と野営の道具を取り出して地面に並べていく。
「こういう力仕事、準備なら任せて欲しいです!」
ラレシアは喜々として僕の取り出した野営道具、馬車の中に入れておいた野営道具を取り出して道具の準備を始めていく。
「キリエはラレシアの補助、リーリエは辺りの探索、僕は簡単な罠を作っておくから。ラレシアはそのままで」
「了解」
「わかりました!」
「う、うむ……その申し出、了承しましょう」
僕の指示に他の三人が頷き、それに従って全員が行動を始める。
「よし」
それから少しばかり時が進んだ頃、全ての準備が終了する。
かかった時間は五分程度だろうか?迅速を求められる自然の世界だとこれくらいの速度で自分たちの拠点を作らないと不味い。
「……素晴らしい手際ですね」
「冒険者としては当然の腕前だよ」
キリエの言葉にそっけなく返しながら、僕は最終確認をしていく。
「……よし、全て問題なし。野営の問題なし。後はばんッ!?」
強い風と近づく膨大な魔力。
僕は己の吐く言葉の途中で。
「ラレシアッ!」
自分の言葉を止めてラレシアの名を叫ぶ。
「はいですッ!」
巨大な大剣を手に持つラレシアが地面を大股で走って進み、その大剣を持ち上げる。
「ぐっ!?」
それと同時に強い衝撃が走り、甲高い音が響く。
「天火、竜……」
巻き起こる強い風に全てを照らし、陰り始めてきた太陽の光を呑み込む強い炎の光。
何故か、どうしてか。
野営の準備を整えた僕たちの元に火山の頂上にいるはずの天火竜が途轍もない速度で襲撃を仕掛けてきた。
「ガァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアッ!」
「総員、戦闘用意!天火竜の討伐は明日じゃない……今だッ!」
僕は慌てて己の装備である短剣を二つ構え、他の三人に向かってそう叫んだ。
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