第8話
フォーエンス家の応接室で行われた僕とマリア様の初顔合わせ。
そこでは、当事者である僕たちに加えてお父様、そしてマリアの母が一堂に会していた。
途中までは応接室で過ごしていたのだが、お父様の。
そう、お父様の余計なお節介による申し出……二人の時間があったほうが良いだろうとのことで僕はマリア様と二人で自由に散策することになっていた。
「……」
「……」
優しくするわけにはいかない僕としては行く場所に悩んだが……最終的に図書室に行くこととした。
彼女は本を読むのが大好きな女の子である。
この図書室は丁度いいだろう。
「す、すみません……アレス様。ここがどういう意味なのか理解できますか?」
封印術に関する本を読んでいた僕へと一冊の本を手に持ってマリア様が声をかけてくる。
「どれ?見せて」
僕は立ち上がり、マリア様の隣へと座って声をかける。
「……ッ、こ、こきょです」
マリア様はテーブルの上に本を広げて、とあるところを指差す。
「ふぅむ……ここか」
マリア様が持っていた本は天文学に関する書籍。
教えてくれと指差している場所は地動説に関するところであった。
「ここらへんは宗教も絡んでくるから複雑なんだけど……」
この世界には天動説を唱える一神教、前世におけるキリスト教のような宗教。
ブレノア教が存在するのだが、キリスト教とは違って世界宗教とはなっていない。
ローマ帝国のようにこの世界でも大陸を席巻した大帝国は存在していたのだが、その帝国に置いてブレノア教は国教とならず、世界中に多くの信者がいるものの、圧倒的な権益を持つには至らなかった。
うちの国ではブレノア教よりも多神教であるアカレコ教が盛んであり、何ならフォーエンス家は世界でも珍しい無信仰者の家系である。
「まぁ、良いか。地動説は簡単に言うとすべての惑星が恒星を中心として回っている、って話だよ。ブレノア教はこの星を中心として他の惑星が回っているという天動説を主張しているため、ここらへんはデリケートな話なんだよね。ここらへんに関しては天文学者になるわけではないのならスルーしとく方が無難だと思うよ」
「なるほど……だから他の書籍でも記述が少なかったんですか……」
「そうだね。ブレノア教は結構面倒だからね……強硬派が多いし。君子危うきに近寄らず、だよ」
「……なんですか?それ」
「僕が今、パッと思いついた造語だよ」
「なるほど」
僕の言葉にマリア様が頷く……前世のことわざがこの世界で通じるわけもなかったね。
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