第9話
図書室では特に何の問題もなく平和な時間を過ごす事ができた。
マリア様はちゃんとゲームの設定通りに博識で、話していて普通に為になることも多いし、面白い。
「想像以上に宗教問題はややこしいんですね……」
「そうですね。今の所この世界は安定してしますし、次に大陸を焼き焦がすほどの大戦争が起こるのであればそれは宗教を理由とした宗教戦争になると思いますよ」
前世の世界においては宗教は利権やら民族問題に匹敵するほどの災禍を引き起こし、数多の戦争を引き起こした存在だ。
魔族による人類侵攻がなければ必ず宗教戦争は置きていただろうし、ゲーム世界においてもブレノア教関連でかなりごたついたし、その問題は結局ゲーム終了時にも解決していなかった。
「戦争は嫌、ですね」
「そうですね。戦争は多くの資源を失いますから」
他者がやっている戦争は金になるが、自分が行う戦争は最悪だ。
善人ヅラの傍観者が最も得だ……宗教戦争が起きたらうちの国も巻き込まれるだろうなぁ。
「我が国は概ねすべてのものが揃っていますし、領土としても現在の段階が最も守りやすいですから、これ以上拡大してもむしろ損しかありません。戦争で得られるものが何もない以上、戦争が愚策……宗教問題は本当に頭がいたいです」
「そうですね」
僕はマリア様の言葉に頷く。
そんな時、ダラダラ知識の結晶たる本を広げながら雑談する僕たちがいる図書室の扉がノックされる。
「どうぞ」
「失礼致します」
僕の言葉を受けて図書室へと入る部屋の扉が開かれ、中に一人の老執事が入ってくる。
「どうした?爺や」
「お時間となりました……そろそろお帰りなられる時間です」
「なるほど」
「あっ……」
「お父上が応接室の方に戻ってくるよう伝えろともうしつかっております」
「了解……それじゃあ、参りましょうか」
僕は老執事の言葉に頷いて立ち上がり、視線をマリアの方に向けて口を開く。
「は、はい……」
こうして僕の婚約者候補であるマリア様との初顔合わせは終わった。
マリア様に対して僕から特別なことは何もしていないし、好かれているなんてことはないだろう。
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