第28話

「なにか酷い詐欺を見た気がするわ」


「えぇー、どこが?」


ずっと奴隷用の服を着させている訳にも行かないので、ラレシアに予め買っておいた巨人用の服を着させに行かせている間、僕はリーリエにとんでもない言い草を言われる。


「……貴方の持つ雰囲気って凄まじいものがあるわね」


「まぁ、一応はお貴族さまだしね」


リーリエの言葉に対して僕は肩をすくめながら答える。


「これで前衛は確保出来た。これからはあの子にちょっとした教育を施し、使い物になるようにするだけだね」


「……あの子の教育は私がするわ」


「え?なんで……?」

 

 僕はこの世界のシステムをある程度把握している……この世界で僕以上に他人を理論値で効率よく鍛えられる人はいないと自負しているのだけど。


「何かノームに教育を任せたら、貴方を崇拝する忠実な狂信者へと成長させそう。いくら奴隷と言えども……ちょっと、ねぇ。ノームの狂信者とパーティーを組むのは私が厳しいかもしれないわ」


「何たるレッテル。僕ってばそんなひどい子じゃないんだが」

 

 この短時間で僕の評価がストップ安になっている気がする。


「なんというか……貴方って悪人というわけでもないんだけど、必要であれば覚悟を持って悪事を為し、多数のために少数を切り捨てそうだし……」


「それは割と普通の貴族像では?」


「貴方の場合はそれに加えて持ち前のカリスマがあるのが……ちょっと」


「まぁ、一歩間違えたら最悪の悪党になるかも?とは自分でも思っているよ」

 

 ……何も僕は僕だけというわけではない。

 この世界で生を持ち、この世界で胎児から赤ん坊へと成長していく中で本来の『アレス』が持つ生まれながらの『性格』がほんのり流れ込んできている。


 今の僕もゲームのときほどではないが、しっかりと闇落ちし、大衆を扇動して世界をぐちゃぐちゃにする可能性をほんの少しは秘めている。

 だからこそ、僕は闇落ちフラグを折るのに必死なのだ。


「自覚あるんだ……まぁ、そんなことにはならないよう私が監視してあげるわ」


「ありがと……ところで、ラレシアの教育に関してだけど少しくらいは介入させてね?ちゃんと一線級の英傑に育てるんだから……巨人族の英雄になれるほどの逸材に」


「えぇ。それくらいは認めるわよ。一緒にラレシアを私たちの仲間にふさわしくなるよう鍛えていきましょうね」


「うん。そうだね」 

 

 僕はリーリエの言葉に頷いた。

 

 

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