第27話

 奴隷の購入は一切の不備なくスムーズに終わった。

 そして、僕は購入した巨人族の奴隷を僕とリーリエが拠点とするこじんまりとした家へと運ぶ。


「……ギリギリだな」

 

 猿轡で、目隠し、耳栓で。

 未だに五感のうち、三つを塞がれている巨人族の女の子……ラレシアを見上げながらボソリとつぶやく。

 

 3mという高い身長を持った子がここで生活するには少し……いや、あまりにも狭い。

 普通に立っているだけでも天井に頭がつきそうだった。


「うーん。引っ越す必要があるかも?」


「いや、そんなことよりも早くこの子を自由にさせてあげてよ。いつまでもこの状態は可哀想よ」


「あぁ……うん。そうだね」

 

 僕は魔法を使ってちょいちょいと風を起こし、器用に風を操って猿轡などを外していく。


「これでよし」

 

 五感のうちの三つが開放されたラレシアへと視線を送る。


「どうも、始めまして。巨人族の娘、ラレシア。とある事情により偽りの姿、偽りの名での自己紹介となることを許して欲しい。僕はノーム。ただの冒険者であり、君の購入者だよ」


 僕のことを知覚出来るようになったラレシアへと僕は一礼し、自己紹介の言葉を口にする。


「さて、麗しき女人。貴方の名を聞いても?」


「えっ、あっ……わ、私は……ラレシア、です。はい」

 

 いきなり五感のうち三つが開放され……急に自分の世界を取り戻したラレシアは自身の前に立つ僕の雰囲気に押し流され、自分の名前を口にする。


「なるほど……ラレシア。美しい名だ。そのまま自己紹介をお願い出来るかな?」


「えっ……あっ、うん。えっと……わ、私は巨人族で、母親も父親もわからない、です。私は生まれたその時から何処かに一人で立っていて……そのまま奴隷商人に捕まって、今です……そ、そのだから。あまり出来ることが……」


「構いませんよ」


 僕は不安そうなラレシアのその言葉に対して優しく告げる。


「貴方がどれだけ未熟であっても僕がどこまでも成長させてみせましょう。貴方を導きます。だから、心配する必要はありません」


「あっ、ありがとうございます?」


「えぇ。どういたしまして。それでラレシア。僕が貴方に望むことは唯一つ。一緒に戦って欲しい。ただ、それだけです。共に戦ってくれますか?」


「えっ……あ、はい。こちらこそお願いします」

 

 ラレシアは僕の雰囲気に押しこまれ、流され、そのまま僕の言葉に頷いたのだった。

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