第18話

 シャルルを拾ってから一週間。

 

「えい、えい、えい!」

 

 この間、僕はシャルルへと様々な教育を施させていた。

 僕が学園に言っている間に、執事たちの方から礼儀作法と基礎的な勉学を学び、僕が学園から帰ってきたら二人で武術の鍛錬を。

 

「足元がお留守」

 

 僕に向けて必死に木剣を振るうシャルルへと足をかけて転ばせて、僕は口を開く。


「剣や僕だけに意識向けすぎ。せめて足元にだけはちゃんと意識向けて自分の意志で動かして」


「は、はいッ!」

 

 シャルルは僕の言葉に頷き、再び立ち上がって剣を構える。


「視野を広く、どこまでも広く。情報は何よりも尊ぶ宝だ。大抵の場合、より多くの情報を持つ者が勝利する。それは戦略単位の話から個人単位の話まで変わらぬ事実」


「はい!」


「剣、少し強く握り過ぎかも。そんな強く握られなくとも魔力で包み込めば手から離れることはない。もっと気楽に」


「はい!」


 僕は夕食の時間となるまでの間、 シャルルの鍛錬に付き合うのだった。


 ■■■■■

 

 夕食を食べ終え、お風呂も済ませた満月が輝く夜。


「シャルル様がご就寝なされました」


「了解」

 

 個人的な野暮用にお父様からパスされた仕事の数々をこなしていた僕は動かしていた自分の手を一旦止めて視線の方を自分へと声をかけてきた老執事の方へと向ける。 


「それで?レイブ学園に入る最低限は身についた?」


「……本当に最低限ではありますが」


 僕の質問に対して老執事が頷く。


「それで構わないよ。ある程度のことなら僕の力でなかったことにできる。本当に最低限で十分」


「それならば良いのですが……」


「シャルルへの教育ご苦労。とりあえずのところシャルルの件についてはここまででいいよ。君には他にも色々頼んじゃっているし、他の仕事の方にも力を入れたいでしょ?」


「すべて素直に話すのであればそうですね。若かりし頃を思い出すような忙しさです」


「はは、すまないね」


「いえいえ、やり甲斐がありますよ。私も老いて朽ちるにはまだ早いですからな!」


「それじゃあ最大限活用させてもらうよ」


「えぇ」


 僕の言葉に老執事が深々と頷いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る