第19話
公爵家の次期当主ともなれば学園に平民を一人ねじ込むくらい造作でもない。
シャルルは何の問題もなくレイブ学園へと入学し、そのまま僕の付き人のような立場となってSクラスの方にも適応した。
いくら彼女が平民だと言っても僕からの寵愛を受ける子を虐める勇気のある奴などいない……適応出来て当然だろう。勝手に周りも丁寧に扱うだろうからね。
「ねぇ、マリア様。少々放課後お時間よろしいですか?」
そんなクラスにおいてシャルルよりも遥かに馴染めておらず、浮きに浮きまくっているマリア様へと僕は声をかける。
王族と言う恵まれた生まれであり、名目上の頂点ではあるものの、王宮内での立場は不安定で味方はゼロ。
ぞんざいに扱うことなど出来ないが、かといってこびへつらっても特になるどころか下手したらマイナスになるまであるマリア様へと話しかける人はうちのクラスにいなかったのだ。
「ふぇ!?……ぁ、しょ。しぇい!はい!大丈夫です!」
僕の言葉にマリア様は困惑し、動揺しつつも僕の言葉に頷く。
「それなら良かったです。放課後、私とシャルルの二人と共に鍛錬を行いませんか?」
「えっ……?鍛錬、ですか?」
「はい。そうです……あまり戦闘経験のないシャルルと同じ強さを持つ人が欲しいのです」
普通の人ならプライドを理由に怒りを買うだけの誘い文句は極度なまでに自信のないマリア様にだけは刺さってくれる。
「あっ……そういうことですか。それならご一緒させてもらいます」
僕の予想通りマリア様は僕の提案に笑顔で頷く。
「ありがとございます」
僕はマリア様の言葉に笑顔で頷く……今はこれで良い。
今のところは落ちこぼれ扱いを受けているマリア様であるが、ちゃんと秘めたる才能くらいは持ち合わせている。
マリア様は勇者パーティーの一人としてしっかりと活躍するメインヒロインの一人なのだ。
本来、ドラマチックな覚醒をするはずの彼女ではあるが、そのドラマの主人公がいないのだ。
代わりに僕がサクッと堅実に、努力でもって覚醒させてあげよう。
自信を手にするのは彼女が強くなった後で構わない。
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