第20話

 マリア様とシャルルが互いに剣を持ち、ぶつかり合うのを僕は傍で眺める……びっくりするくらいマリア様は弱いな。

 一週間ちょっと僕の教育を受けただけのシャルルを相手に負けそうになっているじゃん。

 これは才能なしの烙印を押されても仕方ないわ。


「ちょっとストップ」

 

 僕は二人の間に割って入り、戦闘を一旦を止める。


「まずはシャルルだね……やっぱり視野が狭いなぁ。傍に見ている僕がマシュマロを齧って王宮を作っていたことに気づいてないでしょ?僕の方見て驚愕していたマリア様とは違って。やっぱり視野の狭さは弱点。急な不意打ちを受ける可能性もあるから、視野は広くないとダメかな」


「はい!」


「後、魔力の動かし方がちょっと変?いや、でもこれはこれでありどころか、最高だね。この方向で伸ばしていこうか。魔力の動かし方は……」

 

 僕は数分ほどシャルルにダメなところを治し、近接戦闘時の魔力の動かし方を教えていく。


「次はマリア様ですね」


「えっ……?私ですか……私は、その」


「いいえ。少しばかり気になることがありましたので……せっかくなので。お手を取っても?」


「わ、私の汚い手で良ければ……ど、どうぞ」


「汚いことはありませんよ……ありがとうございます」

 

 僕はマリア様の右腕を手に取り、手首を回す。


「……ふむ。やっぱりそうですね」


「な、何かありますか……?」


「触ってみて確信したけど、マリア様の魔力の形質はだいぶ異質。あまり剣向いてないかも」


「……は、はは。や、やっぱり私のは……その」


「ですが、弓持ったら強そうですね。というか……うーん。やっぱりそう。弓しかありませんね。マリア様の魔力であれば剣に魔力を流すよりも鏃に流すほうが効率的で強力です」


「そ、そうなんです……?」


「そうですね。良かったらなんだけど、マリア様。弓も練習してみませんか?マリア様なら良いでしょ?」

 

 王族は剣術を修め、馬に乗って軍の先頭を走り、敵軍を打ち破ることを理想とする人たちであり、実際に建国者たちはそう活躍した人たちだ。

 だからこそ、弓を学ぶことは本来忌避すべきことなのだが……。


「だ、大丈夫です!弓でも何でも教えてほしい、です!」


「お任せを」

 

 僕は何ら躊躇いなく頷いたマリア様の言葉に笑顔で頷いた。

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