第23話

 僕とリーリエがパーティーを組み、冒険者としての活動を始めてからの日々は順調そのものだった。

 ゴブリンの巣穴……メルボランどころかこの国を揺らせるほどにまで勢力を広げていたゴブリンたちを殲滅した僕とリーリエの二人はメルボランにおける最大手の冒険者として周りから認められ、大活躍の日々を送っていた。


 悪役として活躍できるだけの才を持ち、貴族という恵まれた場所で幼少期よりただひたすらに己を鍛えてきた僕と、最終的には魔王を倒して英雄となるゲームの主人公と同じパーティーで活躍したリーリエなのだ。

 一般の冒険者と比べたら僕たち二人は頭一つ抜けている。


 残酷ではあるが所詮、しっかりとした教育を受けていない人間から特別優秀な人間が生まれるなど、よっぽどの才がない限り無理なのである。

 リーリエも大きな商会の娘として生まれ、しっかりとした教育を受けているからね。


「んー、仲間増やさない?」


「え?どうしたの?いきなり?」

 

 今日もそこそこの依頼を難なくこなし、金銭を稼いで行きつけの飲食で夕食を取っていた僕は自分の前に座っているリーリエへと一つ。 

 提案を投げかける。


「いや……僕たちが今より更に成長するのであれば仲間が必要だと思うんだよね」


「……そうかしら?」


「そうだよ。ぶっちゃけさ、リーリエってば伸び悩んでいるでしょ?」


「うぐっ」

 

 僕の言葉を聞き、リーリエは言葉を詰まらせる。


「僕は体的にも魔力的にも伸び盛り……今も順調に成長している。それに対してリーリエはどう?」


「……むむ。の、ノームが伸びているのはまだ若いからとも……」


「とはいえリーリエ。回復関連の魔法の技量は今でも上がり続けているでしょ?」


「まぁ……」


「そろそろリーリエは一本に絞るべきだと思うんだよね」

 

 リーリエは何でもできる。

 近接戦闘も、遠距離戦闘も高いレベルでこなせる……だからこそ、彼女はソロの冒険者として活躍することが出来ていたのだ。

 だが、それでも彼女の本職は回復だ。ゲームでの役割も回復職であった。

 優秀な冒険者から英雄になるには自分の最も得意なことに絞り、殻を破る他ない。


「リーリエが回復一本に縛るならば、基本的に敵の攻撃をすべて避けるスタイルである僕との相性は絶望的に悪い……だから、リーリエとも相性の良い仲間がいると思うんだよね」

 

 僕が欲しているのは英雄であるリーリエなのだ。

 己が目的のために、リーリエには一足先に英雄になってもらう。


「どうかな?」

 

 僕は笑顔でリーリエへと提案を投げかけた。

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