第17話
僕のお願い。
それはこの街から少しだけ離れたところに住まうとある『魔物』を倒すことであった。
「ふ、ふふふ……公爵家次期当主様のお願いなら仕方ないってやつだよ……」
「それに逆らう権限など私たちにはない……」
「私はどこまでもノーム様についていくだけです!」
キリエが馬を操る馬車の中、僕たちは言葉を交えていた。
「そこまで難易度が鬼ってわけでもないと思うんだけど……」
僕は不安げなリーリエとキリエに対してそう話す。
「ちゃんと難易度鬼だと思うわよ!?タウロス王国の南方を制する偉大なる巨人、サイクロプス。下手な竜よりも遥かに強い悪魔の化身のような魔物!間違えなく難敵よ!」
「……く、くくく。運命に愛されし我が前に立ちふさがる壁。き、き、きっと……わ、我なら攻略できるはず」
「今の僕たちなら倒すのも無理じゃないと思うんだけどね」
震えながら話す二人に対してそう告げる……そう、僕たちなら無理じゃない。確実に。サイクロプスについて、よく知っている僕が断言出来る。
思ったよりも僕のパーティーは豪華かつ強くなっている。キリエの存在はもうイレギュラーの極みだ。
「……んー」
どうしようかねぇ。
キリエが操る馬が引く馬車がゆっくりと道を進む中、僕は雲ひとつない綺麗な青空を見上げる。
「今や同年代で僕たちに適うものはなく、冒険者全体でみても圧倒的上澄みだよ」
ゲーム中のボスとして主人公の前に立ち塞がることが出来るほどの才を持ち、誰よりも早くから訓練を始めた僕に、主人公のパーティーメンバーとしてラスボスを倒すまでに到れるリーリエ。
ラレシアだって特別な人材だ。
彼女はゲーム内で最強の巨人族、巨人族の英雄として大活躍する人物である……キリエが何者なのかは僕も知らないが、それでも彼女の持つ力は圧倒的かつ異質。
個人的な感想だが、主人公のパーティーメンバーである賢者の少女よりもキリエの使う魔法の方が凄いように感じる。
「自信を持っていい」
世界でも有数の才能が集まり、一つのパーティーメンバーを組み、順調に成長してきているのが僕らのパーティーなのだ。
「サイクロプスにだって問題なく勝てるさ」
そう、問題なく勝ててしまうだろう。僕たちは……サイクロプスに。
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