第25話

 亜人。

 獣の身体と特徴を持った獣人、長い寿命と美しい肉体に長い耳を持つエルフ、海を生息地とし魚のような下半身を持つ人魚、ありとあらゆる生命を壊すことを至極とする褐色の肌に角を持った魔族など。

 この世界には様々な特徴を持った知性ある『人々』が存在する。

 

 だが、悲しきかな。

 この世界の中で最も繁殖能力に優れ、すべての物事をある程度平均的にこなす種族たる人種によってこの世界のバラエティー豊かな種族の数々は、人種以外の『人々』は被差別階級へと押しこまれている。

 

 一応昔よりは改善されており、僕の母国のような法的に亜人差別を禁止する国もあるが、それでも亜人たちの立場はこの大陸の中で低く、不安定。


「いや……私としては特別亜人に対しての差別意識はないけど……」


「それなら良かった……僕が買おうと思っているのは亜人だからね。僕たちが欲するのは相手の攻撃を受け止めるどっしりとした前衛。逆に言うとそれだけ出来てくれれば良いから前衛に最も適した種族を選ぶのが良い」


「まぁ……そうだけど。でも、大丈夫かしら?その貴族とかとの……」


「問題ないよ……この僕がいるからね」

 

 アレス・フォーエンスは生まれながらの貴族であり、大衆を扇動する生まれながらの悪役である。

 生まれたその瞬間よりカリスマ性に優れる己、本来の仕草からは他者を魅了する気品が。

 その声には他者の心を掴んで離さず、どこまでも染み渡っていく厄介な性質を持つ。


「僕が前に立ち、僕が声を発する以上。たとえ周りに何があろうともその場の主役はこの僕だ。全ての人間が僕に目を奪われ、僕の言葉を聞く。亜人がパーティーメンバーであろうとも関係ない」


「……ッ」

 

 絶対の自信と力を見せる僕の気配に気圧され、リーリエは言葉を引きつらせる。


「だから、大丈夫。理論も、論理もない。それでも大丈夫。なぜならリーリエの前にいるのは僕だからね」


「……す、すごく傲慢だね」


「貴族とはそうだろう?」


「とうとう自分から貴族だって言い出したね」


「そりゃまぁ、そんな隠す気もないしね」

 

 僕はリーリエの言葉に対して明るく返す。


「それで?亜人の奴隷を買ってパーティーへと加えるのにリーリエは反対?」


「ノームがあれだけの自信を持って啖呵を切ったのに反対なんて出来ないよ。ノームがこの子だと思った子を買うのに私は賛成するよ」


「ふふふ。そう?ありがとう」

 

 リーリエの言葉を受け、僕も口を開いた。

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