第23話
桃源郷の花畑。
サイクロプスを倒し、リーリエの影響で草一つ生えていなかった荒野が桃色の花畑となった元荒野で僕は地面に体を倒して、空を眺める。
ゲーム内において桃源郷の花畑と呼ばれるここはゲームのアレスの最期の場所なのだ。
「あぁ……」
アレス・フォーエンスの人生は悲惨そのもの。
父と母に巻き込まれる形で闇落ち。
本来治してもらえるはずだった母はゴミのように打ち捨てられ、魔の側につくと決めた父は醜悪な実験の果てに理性なき怪物となった。
そんな中で、絶対服従の呪いをかけられたアレスは魔族の手先としてありとあらゆる悪事に手を染めさせられた。
腐っていく母を、理性なき父を、魔物の孕み袋となった姉を毎日のように目の当たりしながら、自分の意志関係なく逆らえない魔族の命令に従って生きる日々。
「あぁ……」
母に元気になってほしかった。
自分もただの人として友達を作りたかった。
一人は嫌だった。
だが、アレス・フォーエンスは一人孤独に死んだ。
どれだけ探しても見つからなかった母の病を治すのに必要だった桃色の花に囲まれ、多くの友に支えられて自分へと立ち向かってくるゲームの主人公に殺された。
「でも」
自分の欲しかったものを前にしながら、アレスは孕み袋となって最期は自由の身となるやすぐに舌を噛みちぎって死ぬこととなる姉へと先に逝くことを謝罪しながら一人ぼっち息絶えた。
「僕は、違う……変えられた」
「ノームッ!ノームッ!」
血を流して倒れる僕の名前を叫びながらリーリエが駆け寄ってきてくれている。
僕は、一人じゃない。
ありえないが、ここで死ぬこととなったとしても僕は一人ぼっちで死ぬことにはならないだろう。
「ふふっ」
まだ母は時期的に死んでいない。
フォーエンス公爵家が闇落ちしたとの話も、母が死んだという話も出ていないから間違いないだろう。
僕は間に合ったのだ。
自分の直ぐ側にある桃色の花を二輪ほど摘み、自分の異空間へと収納する。
「大丈夫!?」
「……あまり揺らさないでね?」
慌てた様子で僕の直ぐ隣に座ったリーリエに対してそう話すと、僕は意識を失った。
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