第9話

 ラレシアが巨人族の国の王族であることを明かし、ついでにラレシアに巨人族の国王になってもらいたいという頼みを三人に告げた僕は……驚愕に固まる三人をそのまま魔法で王都の外にまで運び出し、そこに用意していた馬車の中に収納。

 そして、魔法を使って馬に命令を下し、馬車を出発させた。


「なんかもう懐かしいわ……私たちの知らぬ間にレールが敷かれ、強引に発射させられる。これがノームの無茶ぶりだったわね」

 

「……そうで、あるな……本当に懐かしい。我はまだ混乱が残っているぞ?」


「……私は、もう考えることを止めました」


「そんなに僕ってば無茶ぶりしていたっけ?」

 

「些細なことから大きなことまで、無茶ぶりは日常茶飯事だったわよ?これほどの規模かつスピーディーなのはなかったけど」


 馬車に乗って巨人族の王国へと向かう僕たちは場所の中でまるで、昔に戻ったかのような雰囲気で言葉を交わしていく。


「……それにして、ずいぶんと面白い魔法を使えるようになったのね。動物へと命令を下す魔法?」

 

 リーリエは馬車を引いている馬……業者なしの単独で問題なく走行を続ける馬の方へと視線を向けて口を開く。


「ちょっとした野暮用で動物を使役する魔法が欲しくなってね……ちょっろと新魔法を開発しちゃった」


「はぁ!?新魔法を開発!?あ、貴方それがどれだけ凄いことなのかわかっているの!?」


「横、リーリエの横に座っているキリエは自身の使う魔法全てがオリジナル。新魔法だよ?そんなキリエと比べたら僕なんてまだまだだよ」


「ふふふ、そうよ!我は圧倒的な力を持つ時代の申し子!我に敵う者はなし!」


「キリエはイレギュラーだから考えなくて良いのよ」


「……考えなくていいとまで言われると少し悲しくなる」


「拗らせに拗らせたその難儀な性格は心のうちに仕舞っておきなさい」


「ひどい!?」

 

 リーリエの言葉を受け、キリエが体を震わせ、瞳に涙を浮かべる。

 ラレシアを国王にする……それすなわち、クーデター。

 国を揺るがす大事件をこれから起こそうとしている一団と思えないくらいに和やかな雰囲気で僕たちは巨人族の王国までの長い道のりを進んでいた。

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