第14話
「スラムに住まう凡人は随分と高尚な趣味を持っているようではないか……いや、それでも僕が言えた義理ではないか」
主人公不在……だからといって、目の前にいる少女へと迫る凶行を見過ごすことは出来ない。
倫理的にも、ストーリー的にも。
「「「……ッ!?」」」
いきなり話しかけられた男たちは驚愕と共に僕の方へと視線を向けてくる。
「へ、へへへ……貴族の坊っちゃんがこんなところで何してんだぁ?あぁ?」
レイブ学園の制服を着る僕を見て貴族だと判断した男は頬を引き攣らせながらも、明確に僕を侮りながら口を開く。
「ご貴族様は知らねぇと思うが、このスラムじゃ人の死は溢れ、それを行った犯人の特定など不可能に近いんだぜ?」
少女が逃げないよう抑える人間を一人、彼女の元に残しながら男たちは箱の上に腰掛ける僕を囲んでジリジリと距離を縮めてくる……大方、僕を餓鬼だと侮り、簡単に殺せるものだと思っているのだろう。
教育を受けた貴族とただの凡夫では天と地ほどの差があるというのに。
貴族の餓鬼に商会の小娘、貴族の餓鬼からの教育を軽く受けただけの奴隷の少女ですら多くの魔物と戦い、経験豊富ではあるものの教育を受けることの出来ない平民である冒険者よりも遥かに強者なのだ。
それほどまでにこの世界では教育を受けられる者と受けられない者の格差が大きい。
「平民風情が貴族に勝つなど不可能……ましてやスラムの人間なら尚更ね」
僕は転移の魔法を使い、箱の上から地面に組み伏せられている少女の元へと移動。
蹴り一つで少女を押さえる男を吹き飛ばし、少女を解放させる。
「んなっ!?」
「い、いつの間に!?」
「大丈夫?」
僕は地面へと膝を付け、目線を少女の方に合わせながら口を開く。
「えっ……あっ!だ、だいじょ」
「やっちまぇ!」
「ラァァァァァァ!」
「ハァァァァァ!」
「調子ほざくな餓鬼ぃッ!!!」
僕の質問に答えようとした少女の言葉を遮る形で怒鳴り声を上げながら僕の方へと迫ってくる男たち。
その手には質の低い剣や鉄棒などの武器が握られている。
「邪魔」
そんな彼らに対して僕は腕を一振り。
それだけで発動させた雷の魔法が男たちを襲い、そのまま意識を強制的に奪う。
「こんなところじゃなんだ、場所を移そうか」
立ち上がった僕は地面に倒れる少女の方へと手を伸ばした。
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