第12話
レイブ学園は基本的に一学年、三クラス。
Sクラス、Aクラス、Bクラスと分けられており、上から成績上位者順に振り分けられる。
とはいえ、基本的には身分優先で振り分けられる。
それでもゲームの主人公である彼は抜群の戦闘センスでもって試験管を相手に模擬戦で完勝。
圧倒的な実力でもってSクラスに配属されるのだが……。
「……ん?」
「どうなさいましたか?」
「いやいや、何でもないとも」
疑問符を上げた僕に対して反応した自分の周りにいた男子生徒の言葉に僕は首を振って答える。
学年主席、フォーエンス公爵家嫡男にして次期当主たる僕は当然Sクラス。
今もSクラスの方の一番後ろの席を陣取り、座っているのだが……未だゲーム主人公の姿は見えなかった。
「それにしても社交界に出てこなかった二年もの間、一体何をしていたのですか?」
「ちょっとした自由を楽しんでいたんだよ……うちの家あるあるだろう?」
「確かにフォーエンス家は少々自由な家風ですからね」
「少々どころじゃないと思うけどね?平民との結婚を一家総出でお祝いする家など我が家くらいよ」
「……他に例はないですね」
「我が家の血は何が混ざろうともその絶対性は失わぬからね」
純血至上主義、青い血。
貴族の血を平民とは違う尊きものとするこの世界でフォーエンス家が自由恋愛でどんな人間とも結婚して子どもを為すことに嫌悪感を示す人たちに対して告げる言い訳が僕の言葉だ。
我が家の血が劣等たる他者の血如きと交わることで絶対性を失う。
そうとまで過小評価しているのか……我らが血を舐めているのかと公爵家という大きな立場から堂々と言われれば国王陛下であってもそう簡単に文句は言えない。
「流石、の一言としか言えないですね」
「そうであろう?……くくく。実に面白い言い訳だ」
「……ご自身でそれをおっしゃります?」
「良いだろう?こういうのは自分から言って笑いを取っていくものだ」
僕は自分の周りにいる多くの生徒と軽く談笑しながら周りに注意を向け続ける……おい、全然来ないぞ。主人公。
そ、そろそろ席が埋まるんだが?
「おーい、そろそろ最初の授業をするから座ってくれー」
Sクラス担当の先生の言葉が教卓の言葉で口を開き……他の生徒が席に座る。
席は満員。
ゲームの主人公の姿はなし。
「……どういうこと?」
僕はチラチラと向けられ続けるマリア様からの視線には気づかないようにしながら、Sクラスへとゲームの主人公が姿を見せぬことに首を傾げた。
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