第7話

 無事に冒険者登録を済ませた僕は酒場の方でミルクを一杯もらい、それを抱えて一番端っこの椅子へと腰を下ろす。


「……いい眺めだ」


 どんちゃん騒ぎしている冒険者ギルドの中。

 別にここにいる四分の三を占めるむさ苦しい男どもがいい眺めであるわけじゃない……大事なのは残りの女性たち。


 女性のズボン並びに鎧の着用を禁止する女性衣服制限法。

 この国だけでなく、世界各国で同じようなものがあるこの法律の結果、女性冒険者たちはスカートを履いての戦闘を余儀なくされるはずだったのだが、いつしかスカート履くくらいな下着で良いという人が現れ、そのスタイルが激増。

 何故か上まで脱ぎ、下着だけの鎧。

 ビキニアーマーが女性冒険者の中で主流の装備となっていた。


「……良き」


 決してこの法律は素晴らしいものじゃないだろう。

 この世界における女性差別の象徴……だがしかし、それでも今このときばかりはこの法案を通した人間に感謝したい。

 おっぱいをバルンバルン揺らしてどんちゃん騒ぎしている女冒険者に感動を覚えながらミルクを口にちびちび流し込む。


「と、とと!?」

 

 そんな至福の時間を過ごしていた僕の元にすごい速度で飛んでいた空になったコップを思わず僕はキャッチしてしまう。


「……あん?いつからいやがった?」

 

 ここまで魔法を使って気配を隠していた僕だったが、飛んできたコップを受け止めたせいで他の冒険者に自分がここにいることがバレる。

 ……そりゃ、いきなりコップが空中で停止すりゃバレるよね。


「どうも皆さん初めまして」

 

 僕は飛翔魔法を使って机の上へと立ち、外套の裾を持って貴族式の礼を見せる。


「本日付けで冒険者の末席に加わらせて頂きましたノームです。よろしくお願いします。先輩方」


 どう考えてもこの中で異質な雰囲気を放つ僕を前に冒険者たちの間に困惑が広がる。

 冒険者へと敬語を使う貴族っぽい餓鬼。珍妙な存在だろう。


「……お前のような餓鬼が?」

 

 そんな雰囲気の最中、一人冒険者が口を開く。


「えぇ。僕の見た目からその実力の程を疑うのはわかりますが……少し前に冒険者ギルドに入ってから受付嬢さんの元で冒険者登録の手続きを行い、酒場でミルクをもらい、この席で僕の小さな口でミルクを飲んでここまで減らしました……気配断ちの面から見ればかなり上でしょう?」


「……ッ」

 

 半ば挑発とも捉えられない僕の言葉に対して……。


「何この子可愛い!?私の子にしたいッ!!!」

 

 突然綺麗で若い女性冒険者へと抱きつかれ、そのままキツく抱きしめられた。

 ……。

 …………。

 …………………おっぱいッ!!!

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