第15話
トンロ皇国。
同盟国並びに世界中から集めた教会軍と共に亜人を席巻し、幾つもの戦線を抱えている状態で連戦連勝。
大国としての圧倒的な強さを世界に見せつけた。
しかし、そんなトンロ皇国の好調は圧倒的な絶望を前に叩き潰される。
『オロロ巨人王国とタレシア王国の同盟』
『タレシア王国とドレシア帝国の軍事同盟締結』
『タレシア王国がトンロ皇国へと宣戦布告』
『ドレシア帝国がトンロ皇国へと宣戦布告』
いくらトンロ皇国が強力であろうともトンロ皇国を超える国力を持ったタレシア王国とドレシア帝国の両軍からの全面攻勢を受ければひとたまりもない。
すべての戦線でトンロ皇国は敗戦。
すべての戦線は総崩れとなり、開戦一週間で総兵力の半分が消滅という世紀の大敗北を世界へと晒し、タレシア王国並びにドレシア帝国の威光はうなぎのぼりする結果となった。
「んー、やっぱりちょこちょこ僕の想定にないところが燃えているなぁ……まぁ、でもこれはしゃあないか」
魔法でもって支配下に置いた数多の虫たちよりリアルタイムで送られてくる世界中の情報。
それらを精査する僕は今現在、トンロ皇国の大惨敗を受けて荒れ狂うブレノア教の教徒たちが起こしている反乱並びに暴動の状況を見て誰も居ない部屋で一人、率直な感想を漏らす。
「……僕が燃やしたかったところはすべて燃やしているからね」
地図を眺める僕はぼそりと呟き、大きく背を伸ばす。
「暗躍はもうおーわり。後はもうぶちかますだけ」
フォーエンス公爵領に存在する深い森の中……そこの奥深くに一つ、ポツンと建てられた一つの小さな小屋。
そこから出てきた僕はこれまで己の裏の道。
暗躍の影と成果の結晶が詰まっていた小さな小屋へと劫火を投げ込み、そこにアル全てのものを焼却処分する。
「さてはて、最終戦に向けた最後のひと仕上げを済ませに行くとするかね」
僕以外誰にも知られることなく、ひっそりと存在していた小屋が完全に消え去ったのを確認した僕は空へと舞い上がったのだった。
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