第14話
リーリエたちから逃げるようにしてその場を立ち去り、その流れで敵司令部を魔法一発でまとめて蒸発させた僕はドレシア帝国へと密入国をしていた。
「さて、汝の目的は果たせたか?」
「僕がしくじるわけがないでしょ」
そんな僕は密入国だけでは飽き足らず、王宮へと不法侵入。
皇帝の私室へと乗り込んだ僕は当の皇帝から歓迎を受けていた。
「というか、すべて目論見通りに進んでいるかどうかは世界でも最高峰の諜報機関を持っているあなたが一番知っているでしょうに」
「動かしている張本人の手ごたえも大事なのだ……それで?タレシア王国内部にいる魔族は殲滅しきったか?」
「もちろん。それで?戦争の準備は出来ている?」
「ふむ。それより、我には聞かぬのか?帝国内の魔族について」
「聞かなくとも答えはわかっているじゃん」
「コミュニケーションは大事じゃぞ?」
「……はぁー、それで?ドレシア帝国内の魔族はどう?ちゃんと倒し切った?」
「もちろんじゃ。我の能力を見くびってもらっては困る。この程度造作もない」
「あっそ。んで、話は戻すけど戦争の準備は問題ない?ドレシア帝国はかなり変則的な動きになるけど」
「問題は補給であるな。トンロ皇国の皇都までは問題なく行ける……が、そこから先となると少々未知な部分がある。帝国独力での確保は無理。問題は皇国からどれだけ引っ張ってこれるか」
「……なるほど。補給、補給か……強行突破は可能?」
「まぁ、可能だ」
「じゃあ、強行突破だ……速攻で落とす」
「了解。我も不満はない……どうせ多くが死するのだ。飢えたまま死なせても問題ない」
ドレシア帝国の皇帝は自国の兵士をさも当たり前のように斬り捨て、見捨てることを平然と口にする。
「……うん、そうだね。ここまでは問題なし。後は仕上げ。既にマリア様にはトンロ皇国への宣戦布告の準備を終わらせてもらっている……ドレシア帝国のタイミングに合わせるよ」
「あいわかった。これからすぐに発布しよう」
「頼もしいね……それじゃあ僕はここらで。最終戦前、最後の一戦を僕はしなくちゃいけないからね」
背を向け、この場を立ち去ろうとする僕……そんな僕に対して皇帝陛下は声をかけてくる。
「アレス。我らは上位者だ。我らは王として民を守り、繁栄させる責務がある。だがしかし、それはあくまで民の視点ではなく上位者の視点でもって、だ。同じ人と思うな……潰れるぞ。命は軽くない」
「……」
「気負うなよ、小僧」
「……わかっているよ。でも、僕しかいないでしょ」
僕はドレシア帝国の皇帝へと背を向けたまま呟き、この場を後にした。
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