第13話

 ラレシアの初陣。

 普通に世界最強格にまで成長していたラレシアはトンロ皇国の雑兵相手に無双していた。

 味方が敗走を行う中、単独で突っ込んでいくラレシアはトンロ皇国の雑兵の攻撃を物ともせずに暴れまわり、次々と被害を拡大させている。


「むむぅ……想像以上に強くなっている。うん、良いね」


 ラレシアの戦いぶりをリーリエとキリエの二人と観戦していた僕はボソリと感想を呟く。


「無理やり国王にさせてからも放置プレイを続ける誰かさんの知らぬ間にも私たちは成長し続けているのよ」


「成長した我の業火を今すぐにでもどこかの薄情者に見せてやりたいわ!」


「……」


 僕は二人の言葉に背を向ける……二人とも語気が強い……え?僕のせい?まぁ、うん。そうですね。その通りです。


「あー、よし。これなら全部三人に任せても良さそうだね!」


「もう抜けるの?」

 

 僕の言葉に逐一反応するリーリエがこちらを非難するような視線を送ってくる……はい、当然の行為ですね。


「……ゆ、許して?なるはやで戻ってくるから」


「我らを負けるかもしれない戦場に残すと?」


「あっ、それだけはないから安心して。問題なく勝てるから」


「……絶対はないのよ?」


「絶対の勝利が約束された戦争を用意するのが僕の仕事だよ」


 僕はリーリエの言葉にそう断言する。


「ラレシアの国を負けさせることはないし、ラレシアの初陣を汚すことはないよ……万が一の時が来ても三人なら問題ないでしょ?」


「当然じゃない」


「当然の摂理ですッ!」


「ふふふ。なら、良かった」


「……選択肢ミスったかしら」


「どんな選択肢を取っても僕は抜けなきゃなんだけど……」


「「……」」


「……ご、ごめん」


 僕は二人の視線から逃げるように目を逸らす。


「と、とはいえだよ!そろそろ戦場も動き出すだろうから、僕は抜けるよ!ささっと敵の司令部を壊滅させないとだし」


「ん?」


「へ?」


「ということで僕はここら辺で……失礼させてもらうよ!みんながびっくりするようなことが起きるタイミングで僕が戻ってくるから!」


「ちょっと待ちなさい!ビックリするようなことって何!?これ以上のサプライズはいら」


「それじゃあー!!!」

 

 僕はリーリエの言葉を遮って大きな声を上げ、そのまま逃げるようにしてその場を立ち去ったのだった。

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