第15話
タウロス王国に置いて公爵という立場はあまりにも強い。
そこまで王権の強くないこの時代、公爵家の力は時として王権にさえも匹敵するのだ。
「……はぅ、ほへ、かっぺ」
そんな公爵家の次期当主へと喧嘩を売ったという事実に硬直するテラリア卿。
「さて、テラリア卿」
「はひ!?」
僕に名を呼ばれたテラリア卿は大慌てで膝をつき、頭を垂れる。
「国王より承った己が統べる街をより発展させる。その意気と行動力は実に素晴らしいものだ。しかし、その街に根付き、熱を与えるのはそこに住まう人たちだ。決して彼らを無碍に扱ってはならない」
「は、ははぁ!」
「先程も言ったように僕は寛大だ。君は二度違えた。だが、二度だ。此度は許そう。だが、それにも条件がある」
「じょ、条件、ですか?」
「この孤児院を壊すのは良い。だが、彼らが住む場所を失うような真似にはするな。新しく綺麗な孤児院を作ってやれ……貴公とて金銭はあるだろう?それとこれだ」
僕はテラリア卿へと氷結花を取り出して彼へと差し出す。
「事情は既にわかっているであろう?解決させろ、ものはあるからな」
「ハッ」
僕の言葉にテラリア卿は素直に頷く。
「リリアさん」
「はひ!?」
「騒がしくしてすまなかったな。だが、依頼はしかと完了した。この後はテラリア卿を頼るが良い……もし、テラリア卿が何かしでかせばこれを鳴らしてくれ」
僕に名前を呼ばれて声を裏返したリリアさんへと一つの鈴を渡す。
「すぐに駆けつけてみせよう」
「は、はい!」
「それじゃあ、ここらへんで僕らは撤退するよ」
「あっ!ちょ」
僕の言葉を聞いて慌てたような表情を見せるリリアさんのおでこを軽くつつく。
「またね……帰るよ、みんな。これ以上居ても面倒なことになるだけだから」
「ほえ?」
僕は呆然としているリーリエたちを強制的に急かして、この場から離れようと動く。
「あ、ありがとうございました!!!」
「んっ」
リリアさんの大きなお礼の言葉を背に僕はこの場から立ち去った。
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