第11話

 しばらく馬車で森の中を進み……そろそろ依頼にあるゴブリンの巣窟が近くなってきた頃。


「……んっ?」

 

 僕が発動している魔法。

 魔物の並びに人間、動物の気配を察知する僕の魔法が捉えた気配を前に僕は首を傾げる。


「……ッ、これは」


「ん?どうしたの?」


「誰かがゴブリンに襲われている」


 僕の魔法は大勢のゴブリンに襲われている人間たちの気配を察知していた。


「えっ!?」


「ここからずっと直進。その先にあるから……僕はちょっと先に行っている」

 

「ちょ!?」

 

 馬車から飛び出して魔法を発動。

 僕は魔法を使って加速。

 地面を蹴り、爆発的な速度で地面を駆け抜けて一気に進んでいく。


「……なんて運の良い」

 

 僕は一言ボソリとつぶやきながら大地を駆け抜け、ゴブリンに襲われていた人たちの元に一分も経たずしてたどり着く。


「助太刀します」


「子供ッ!?」

 

 結構豪華な馬車の中に二人とそれを守るようにして剣を構えてゴブリンと戦っている騎士が三人。

 ……ゴブリンの死体は目に見えるところにないが、騎士の遺体は既に三人にものぼっている。

 かなりの劣勢と言えるだろう。


「待ってッ!このゴブリン共はッ!」


「問題ありません」

 

 ゴブリン。

 それは緑色の肌を持った子供ほどの背丈しかない醜悪な顔の人型の魔物。

 

 背丈が子供ほどしかないことと初心者用の魔物とされていることもあって舐める人も多いが、ゴブリンはれっきとした魔物である。

 見た目にそぐわぬ力を持ち、簡単な武具と作戦を弄するだけの知性で持って集団として襲いかかってくるゴブリンは明確な脅威である。

 

「まぁ、見た目詐欺は僕の方が上だけどね」

 

 僕はここに来るまでで作った勢いそのままに地面を駆け抜け、二本の短剣でもって次々とゴブリンの首を斬り裂いていく。

 

「ぎゃぎゃぎゃ!」

 

 慌てて僕を囲もうとするゴブリンたちを次々と処していき、遠くから僕を狙っている弓を持ったゴブリンを魔法で貫いていく。


「……馬鹿な」


「……すごい」

 

 それからしばらく。

 結局のところ、僕の速度に一度たりとも追いつくことの出来なかったゴブリンたちは僕に傷を負わせることなく全滅したのだった。


「うーん。ちょっとやばいかも?」

 

 結構作りのしっかりとした弓を持ったゴブリンが十匹……ここの近くにあるはずのゴブリンの巣窟。

 もしかするとかなりの規模なのかも。


「す、助太刀感謝致します。小さき冒険者よ」

 

「ん。あぁ……大丈夫でしたか?」

 

 僕はまだ見ぬゴブリンの巣穴からゴブリンたちに襲われ、劣勢を強いられていた騎士たちの方へと意識を向けたのだった。

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