第10話

 ラリアさん。

 標準的な女性の装備であるビキニアーマーを身にまとう20代前半頃の女性であり、主要装備は長剣の前衛。


 そんな彼女の他のパーティメンバーである三人。

 ガチガチの鎧を着込んで大剣を扱う重量級の戦士であり、パーティーのリーダーでもあるアルマさん。

 軽装に身を包み、簡単な回復や罠の解除、敵の索敵など様々なことを行うことが出来る便利屋であり、短剣を扱うのが得意な中年の男性、フォルズさん。

 魔法使いのローブに大きな杖を持った魔法使いであり、ラリアさんと同じ年齢くら

いのニーナさん。

 

 前衛中衛後衛と割とバランスの良い四人が揃ったラリアさんのパーティーへと僕は混ざり、移動をともにしていた。


「あっ、十時の方向から魔物が接近。まだこちらの方に気づいてはいないし、接敵する可能性が少ないかもだけど気をつけて」

 

 フォルズさんが御者を務める馬車の中に乗る僕は口を開き、警戒するよう告げる。

 ラリアさんたちの依頼は街からかなり遠いところの街道に出ては悪さをする魔物、ゴブリンの巣穴の掃討。 

 巣穴までの道のりは馬車での移動となる。


「了解よ……ちなみにどれくらい離れている?」


「大体1kmくらいですね」


「え?……遠くない?どれだけ索敵範囲広いの?」


「魔法の力です」


「……で、でたらめな話だな」


「……私、そんな魔法知らないんだけど」


「かなりマイナーな魔法ですからね。庶民向けの魔法学校とかでもやらない魔法ですし、そもそも教師すらも知らない魔法だと思いますよ」


「なんでそんな魔法をノームくんが……?」


「それはしー、なんですよ。どこで魔法を習ったかなどはNGです」


 ニーナさんの疑問の声に対して僕は首を振る……貴族である雰囲気は出す。だが、決定的なものは見せない。


「……むむ。ちょっと普通に色々と魔法を教えてもらいたいわね」


「ニーナさんの場合はまず魔力操作からだと思いますよ?」


「え?」


「魔力操作は全ての基本。基本を疎かにするものに成長なんてありません……割と冒険者の中では魔力操作が軽視されがちですが、ここが一番大切です。とある界隈の人たちはまず徹底的な魔力操作の練習を。一流の魔法使いになってもここの修練は怠りません」


「……それ、もう答えを言っているようなものじゃないかしら?」


「何のことやらって話です」


「やっぱり私たちと貴族の間には差があるのね……そもそもの教育という面で大きな壁が」


「まぁ、そうですね……正直に言って差は天と地ほどだと思いますよ」


 教育格差。

 これが貴族と庶民の間に絶対的な差を作っていると言っても間違いないだろう。

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