第44話
無限かと錯覚してしまうほどに長く続いた天火竜のブレスが止まる。
「行くよ」
そのタイミングで僕は転移魔法を発動。
天火竜の上方へと転移する。
「『ねじ曲がれッ!!!』」
僕に残っているありったけの魔力を込めて魔法を発動する。
発動する魔法はただただ空間を捻じ曲げるという単純な効果を持った魔法……シンプルな魔法ほど強力に発動させようとしたら膨大な量の魔力が必要になるが……その代わりとして効果も強くなる。
「……ガァッ!?」
天火竜と地面を隔てる長い空間がねじ曲がり……天火竜が地面へとその身を墜とす。
「今だッ!キリエッ!!!」
「刮目せよッ!!!」
天火竜がブレスを放っている間、ずっと詠唱を唱え続けていたキリエが杖を構えて叫ぶ。
「我が生命、我が魂、我が存在、すべてを持て、すべてを賭け、築きし一つの物語、神界の書庫に納められし書物が一幕。永久にして神なる奇跡をここに『
地面を揺らし、天空を揺らし、空間さえをも揺らすほどの大爆発が起こり、天火竜を包み込む。
「……ッ!!!」
その爆発によって上げられる土煙は当然のように僕の全身を包み込む。
「……っ。まだ、生きてやがるのか」
味噌っかすの魔力を使って何とか土煙を遠ざける僕は視界の中で。
強大な爆発を中心で喰らってもなお息をしている天火竜を収める。
「……やるか」
誰からも見られることのない現状。
ここで僕は自分の中にある切り札を切ることを決める。
「来い────『悪鬼』」
自分の魂の一部が切り離され、外へと堕ちていくような形容しがたい感覚と共に僕の切り札がしかと発動し、天火竜の心臓を潰したのを確認する。
「ごっふ!?」
残っていた魔力のうち、そのほとんどを空間を捻じ曲げるのに使ってしまった僕は転移魔法を使うことすらできずに地面を転がる。
「……い、痛い……」
天火竜の横を僕は無様に転がり、己に土をつける。
「うぅ……」
天火竜を倒したことに喜び、僕のことを一時的に頭からデリートしてしまっているみんなのことを見ながら僕はうめき声を漏らした。
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