第31話

 2mを超える巨体を持ち、全身を分厚い筋肉で覆う暴力の化身たるオーガ。


「ハァっ!」

 

 一流と言えるまでになった冒険者であっても油断できない……そんな怪物であるオーガをラレシアは力でねじ伏せようとする。


「……が、ガァ!」

 

 互いの手にあったはずの大剣を地面に転がして向かい合うラレシアとオーガの二人。

 その二人は共に手を掴み、押し合いをしていた。


「巨人族ぱねぇー」

 

 オーガを超える背丈を持つラレシアは圧倒的な威圧感を放つオーガを押し込み、そのまま潰さんという勢いであった。

 ……オーガと真正面から力比べして圧倒するのインパクトが凄いな。

 人間たちが巨人にビビって戦闘職に就かせず、あぁーだ、こうだと理由をつけて重機のように扱っているのもわかる気がする。


「ガァッ!」

 

 とうとう耐え切れない。

 そう言いたげに体を震わせるオーガが無様に転がってラレシアから逃げる。


「ダメだよ?逃げちゃ」

 

 そんなオーガに対してラレシアは地面に落ちている大剣を何気ない動作で拾い、そのまま地面を転がるオーガへと叩きつける。


「ガァッ!!!」

 

 その一撃をオーガは拳で打ち払う。


「わわ!?……でも、これくらいなら……ッ!」

 

 地面を転がってその場を離れたオーガの近くに己の武器である大剣はない。

 大剣を取りに行こうとしてもオーガよりも巨大なラレシアが前に立ちふさがっている以上簡単に取れないだろう。


「……ガァ」

 

 オーガはその身一つで大剣を持つラレシアに向き合い、戦わなければなかった。


「どんどん行くよッ!」


「ガァァァァァァァァァッ!!!」

 

 自身へと振るわれる大剣に対して拳でもって抵抗し続けるオーガ。

 だが、それにも限界がある。

 幾度も大剣とぶつかった拳からは滝の如く血が流れ、力が抜かれる。


「……ガァ」

 

 いつしか、拳を構えることも出来なくなったオーガは手をだらしなく下げ、ラレシアをただ睨みつけることしかできない。


「さようならッ!」

 

 そんなオーガに対してラレシアは一切の躊躇なく大剣を振り下ろし、脳天をかち割った。

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