第38話
ロンドル殿下並びにその仲間たちの前に立つ僕は剣を構えもせずにただ立つ。
「行くぞッ!お前らッ!!!」
一振りの巨大な鉈のようなものを持ったロンドン殿下は叫び、僕の方へと突撃してくる。
「ふむ……?もうロンドル殿下は一人ですよ?」
そんなロンドル殿下に対する僕の返答は一つ。
「えっ……?」
シャルルに縮地を教えたの僕であり……当然、縮地の技量が上なのも僕である。
「い、いつの、間に……」
ロンドル殿下の後ろにいた二人の獣人の背後に立ち、その二人を気絶させ、そのまま場外にまで魔法で運んだ僕を見てロンドル殿下は呆然と声を漏らす。
「ちゃんとロンドル殿下とすれ違って、二人の元に向かいましたよ?この通りロンドル殿下の服のボタンがここに」
「……ッ!?」
僕の手にあるロンドル殿下にとって実に見覚えがあるであろう服のボタンを見て驚愕に表情を引き攣らせる。
「ボタンがほつれていたので、思わず取ってしまいました。ボタンを返すので後で使用人にでも直すように命じた方がいいでしょう」
「……は、ははは。お前にとって俺は真面目にやる必要もない相手、ってことか」
「学校対抗試合の目的の一つに武を見せることがございます……申し訳ありませんが、圧勝させてもらいます」
「けっ、言ってくれるぜ」
ロンドル殿下は眉を顰めながらも好戦的な笑みを浮かべ、鉈を構える。
「……まぁ、勝てねぇだろうな。ここまで遊ばれた現状で勝つ手段なんて俺も死ぬ気でいくしかねぇ」
「それは辞めていただきたいところですか」
「それくらいなら俺でもわかる。だから、一矢報いるくらいで許してやらぁ」
「ふふふ……一矢も報いらせませんけどね?僕は」
僕は足を一歩踏み出し、それに対応してロンドル殿下の警戒心が跳ね上がる。
ロンドル殿下は瞬きもせず、僕に注目し……彼の集中力が研ぎ澄まされ続ける。
「今回のは転移だからどれだけ目を凝らし、集中しても観測出来ないよ」
転移魔法でロンドル殿下の背後を取った僕は彼の頭を掴み、魔法を使って脳をシェイク。
意識を吹き飛ばす。
「ちょっとずるかったかな?」
僕はぼそりと呟きながら、勝利のガッツポーズを掲げた。
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