第36話

 人々の怒号と悲鳴。

 会場を削る勢いで吹き荒れる魔法の数々にぶつかり合う武具と武具、防具と防具、武具と防具の音。

 

「やぁッ!」


「……援護します!」


「ふたりとも、頑張ってください」

 

 学校対抗試合、第二回戦。

 第一回戦のバトルロワイヤルのあとに行われるのはトーナメント。

 三日かけて行われる大規模なトーナメントバトルである。


「……このッ、クソ!!!」

 

 僕が出ればそれだけで試合など一瞬で終わる……しかし、それだと面白くないのでシャルルとマリアの二人がメインで戦ってもらっていた。

 僕がしているのは本当にささやかな支援魔法と応援の二つだけである。


「……はや!?」


「まず一人ッ!!!」

 

 僕が戯れに教えた縮地をなんか完全にマスターしているシャルルがその縮地を利用して後衛の魔法使いとの距離を詰め、剣を一振り。

 

「きゃッ!?」

 

 豪快な一振りを喰らった後衛職の魔法使いをいともたやすく吹き飛ばし、そのまま気絶させる。


「……ま、まずい!」


「私も一人、です」

 

 後衛がやられ、動揺を露わにした前衛の剣士を地面に縫い付けるようにして弓矢を数本放ったマリア様は地面に倒れて動けない前衛の剣士の前に立ち……。


「あっ、ちょ!?」


「えい、えい、えい、えいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえい」

  

 そして、そのまま前衛の剣士の顔へとかかとを落として落として落としまくる。


「ちょっと……そこらへんでやめておきましょう。マリア様」


 僕はちょっとだけ慌ててマリア様を止める。

 既にマリア様が踏んづけていた前衛の剣士は当然気絶し、その顔は膨れ上がり、見るも無惨な状態になっていた。 


 こちらが大国であるタレシア王国の王女で、相手が中小国の貴族の子だから問題にはならないだろうが、立場が逆だったら大変なことになっているだろう。

 本当に悲惨……悲惨も悲惨。うわぁ……マジで痛そう。というか、親がこれを見て……治しとこ。

 僕はマリア様にフルボッコにされた子の顔を回復した後、立ち上がる。


「んで?まだ続ける?」


 そして、僕は最期に残った少年の方へと視線を向ける。

 三人一組……二人は無惨に敗北し、こちらは誰も怪我一つしていない。残された一人で僕たち三人を叩きのめす。

 勝利は万に一つもあろうだろうか?


「あっ、降参します」

 

 絶望としか言えないような状況に追い込まれた少年は尻もちをつき、体を全力で震わせながらも真顔で降参を口にした。

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