第16話

 僕とリーリエがパーティーを組むことにした日から次の日の朝。

 ゴブリンの巣穴へと襲撃を仕掛けられるよう準備を整えた僕たちはメルボランの中央にある噴水へと集合していた。

 

「準備は完璧かしら?」


「うん。問題ないよー」

 

 僕はリーリエの言葉に頷く。

 リーリエはビキニアーマーと全身を隠せるほどに大きな外套を身にまとい、一振りのレイピアを下げている。

 昨日とは違う完全武装スタイルだ。


 ちなみに僕は動きやすい服装に外套を羽織り、二つの短剣を背中に背負ういつものスタイルだ。


「えっと……ゴブリンの巣穴にまでどうやって行く?私だけだったら走っていくのだけど……」


「走っていくから問題ないよ。そんな遠くもないし、たくさん体力を消費することもないと思うからね……馬車の馬を扱うのって苦手なんだよね、僕」


「私はそもそも扱えないわ。何故かはわからないけど馬が言うことを聞いてくれないの。それじゃあ、走っていきましょうか」


「そうだね……お昼前には付きたいかな?」


「そうね。大雑把な場所はギルドの方から聞いているけど、細かな位置は聞いていないから……道案内は任せるわ」


「ん。任せて……それじゃあ、行こうか」

 

 走ると言えども街の中を全力疾走するわけにはいかない。

 ひとまず僕たちは街から出るための門へと向かったのだった。


 ■■■■■

 

 木々が生え揃う鬱蒼とした森の中。

 少しばかり湿って泥濘んでいる地面に、そんな地面より露出している木の根っこ。

 決して良好とは言えない道を僕とリーリエは力強く進んでいく。

 

「そろそろかな」

 

 かなりの距離を進んだ僕はボソリとつぶやく。


「……そろそろなの?まるでゴブリンの気配がないけど」


「あぁ。それは僕が昨日。馬車でメルボランへと帰る道中で魔法を使ってゴブリンをかなり間引きしていたからかな。軽く百は倒したからその影響かな?」


「な、なるほど……」

 

 僕の言葉にリーリエは少しばかり顔を引きつらせながらも頷く。


「とはいえ百を倒したとしてもゴブリンの殲滅は無理……となると」


「上位種が僕を警戒してゴブリンを統率。巣にこもってガン待ちしているだろうね」


「えぇ……そうね」

 

 リーリエの言葉を引き継いだ僕の言葉にリーリエが頷く。

 

「かなり気をつける必要があるかも」


「ゴブリンの上位種。ボブゴブリン、ゴブリンメイジ、ゴブリンジェネラル……いや、何ならゴブリンキングまでいるかもだしね」


「そうね……まぁ、ゴブリンキングがいたとしても私の敵じゃないけどね」


「頼もしいねぇ」

 

 力強いリーリエの言葉に僕は歓声を上げた。

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