第14話

 レミア商会長の次女の乗る馬車の護衛を終えて、メルボランへと帰還した僕たち。

 ラミアさんたちはギルドへの報告に、僕はリリシアさんと共にメルボランにおけるレミア商会の拠点へとやってきていた。


「こちらが今回助けて頂いた件に関する礼金となります」


「ありがとうございます」

 

 レミア商会のお偉いさんから金貨の入った袋を手渡された僕は頭を下げながら中身の量を袋の重さから判断する。

 ……ふふふ。これだけのお金がこんなところで手に入るとは。どうやら僕は運が良すぎるようだ。


 もはやご都合主義とさえ言えるほどの運の良さ。

 これではまるで僕が悪役ではなく主人公であるかのようではないか。


「貴方がいなければ大切なリリシア様の命が失われるところでした。本当にありがとうございます。もっとお礼をさせていただきたいのですが……」


「いえいえ、当然のことをしたまでです。これだけの礼金を頂いたのですから。もう十分です」


「いえいえ……そういうわけにも」


「いやいや」

 

 僕がやんごとなき身分であることを半ば察しているレミア商会が僕との繋がりを強固にしようと言ってくる様々な申し出を僕は交わしながら談笑を続ける。


「失礼します」

 

 そんな時間を過ごしていた中。

 僕がいた応接室の中へとリリシアさんとその姉が入ってくる。


「おぉ、貴方がリリシアさんのお姉さんですか。初めまして」

 

 僕は立ち上がり、リリシアさんとともに入ってきた女性へと一礼する。

 

「……ッ。わざわざ丁寧にありがとうございます。私はリーリエ・レミアと申します」

 

 リーリエ・レミア。

 彼女は肩の高さで揃えられた銀色の髪に宝石のように綺麗な蒼い瞳を持った美しい女性であり、年齢は16歳。

 かなりの若さでありながらもかなりの実力を持ち、周りからも認められる冒険者である。

 

 ゲームでは大切な妹を魔物による襲撃で失い、心を閉ざしてしまったクールな女冒険者として登場し、魔王率いる魔族と戦うために世界を旅する主人公を持ち前の豊富な経験と確固たる実力で支えるプトスィの刻時におけるメインヒロインの一人。


「著名な冒険者であり、己の先輩でもあられる貴方に会えるのを楽しみにしておりました」

 

 そして、そんな彼女は僕がこの街に来た理由でもある。

 僕の目的を達成する上でこの街で必ず出会っておかなければならない人というのが彼女なのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る