第13話

 レミア商会。

 それはラレンシア王国内で五本の指に入るほど大きな商会だ。

 僕が助けた馬車の中にいたのはそんなレミア商会の商会長の次女、齢十二歳のリリシア・レミアであった。


「今回は私たちを助けて頂き感謝致します」


「いえいえ、当然のことをしたまでです」

 

 森から街へと向かう帰り道。

 僕はラミアさんたちの馬車ではなく、リリシアさんの馬車にご一緒させてもらっていた。

 僕の前にはリリシアさんとそのメイドとして仕える女性、レテンの二人が座っている。


「それにしても、私よりも若いでしょうに随分とお強いんですね」


「それほどでもないですよ」

 

 貴族としてしっかりとした教育を受けた僕に大きな商会の娘として教育を受けているであろうリリシアの会話は実に丁寧そのもの。

 

「ちなみに年齢は幾つほどなのでしょうか……?」


「八歳ですよ。冒険者になる最低年齢です」


「……なるほど」


「ちなみに言いますけど本当ですからね?他の子よりも自分の成長が遅い自覚はありますが……それでも本当に八歳ですからね?」


「あっ、いえいえ!そんな年齢を疑ったりはしていませんよ」

 

 僕の言葉を受け、リリシアがごまかすように首を横に振る。


「なるほど。それなら良いのですが……ところでメルボランにはどんな用で来たのですか?」


「メルボランに住んでいる私の姉に会うためですわ」


「姉、ですか」


「えぇ、そうです。私の姉はやんちゃなことに冒険者として活動しているんです。そんな姉が今、拠点としているのがメルボランなのです」


「なるほど。そういうことでしたか……なるほど。商会長の長女でありながら冒険者として活動している女性。ふふふ、少しばかり興味がありますね」


「私の姉にでしたら私の一言で会えると思いますよ?……それにしても、です。私の姉に興味ですか……それはやはり……?」


「ん?どうなさいましたか?」


「いえ……なんでもないです」

 

 僕がリリシアさんの姉に興味を持った理由。

 それは僕がやんごとなき身分であるにも関わらず冒険者をやっており、似たような境遇にあるからであるとリリシアさんは思っているであろう。

 僕がやんごとなき身分で冒険者をやっているのは事実だが、興味を持った理由は別にある。


「そうですか。ふふふ。それでは、リリシアさんのお姉さんと会えるのを楽しみにしていますよ」


「えぇ」

 

 僕の言葉にリリシアさんが頷いた。

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