第18話
どれだけの時間が経っただろうか。
「一通りは倒し終えたかな……」
返り血でぐっちょりと体が染まった僕は眉を顰めながら口を開く。
「そうね……今のところ気配察知で確認出来る数はだいぶ減ったわね。後は奥の方にいる強そうなやつらかしら」
「ゴブリンキングとかだね……反応的には」
ただのゴブリンとかもう狩り尽くした。
残っている敵は奥の方で芋っているゴブリンキングを頂点とした精鋭たちの群れだろう。
「それと後は……捕まっている女性たちかしら」
基本的には無表情のリーリエがこれ以上ないほどに表情を歪めながら口を開く。
「……」
僕はリーリエの言葉に対して思わず沈黙してしまう。
ゴブリンの巣穴全体の気配を確認している僕の魔法には、この巣穴に捕まっている何十人もの女性の気配を捉えていた。
「彼女たちの保護は私がやろうかしらね」
「……いや」
僕はリーリエの申し出に対して首を横に振る。
「僕も行くよ……冒険者をやる以上避けては通れない道だし、リーリエにすべてを任せるわけにはいかないからね」
魔物による被害。
この世界における魔物によって命を落としてしまう人たちの数、捕まって慰み者になる女性たちの数はかなり多い。
それに対して僕ら貴族は重要な町などは被害がないようにしているものの、予算の不足を理由とし、小さな町や村は切り捨て、冒険者たちに一任してしまっている。
この現状は僕ら貴族の……統治者の怠慢。力不足とも言えるようなもの。
それを前にして貴族として生まれた僕が目を逸らしてはいけないだろう……統治者として人を数字で見るようになっては、ダメなのだ。
これから先の将来。
自分の判断で悲惨な目に合う人たちが出てくることもあるだろう。
だが、その結果起こることを一度も目にしたことないなんてことは責任ある立場としてあってはいけないことだろう。
「無理する必要はないのよ?ノームはまだ若いのだし」
「年齢を理由に目を背けるつもりはないよ。僕はれっきとした冒険者になるつもりなんだから」
「そう……ノームに確固たる覚悟があるのならもう私は何も言わないわ」
僕の言葉にリーリエが頷く。
「うん。ここから逃げ出したゴブリンの掃討もしなきゃだから、だいぶ急ぎめで進めないとね。こんなところで問答して時間を浪費するわけにはいかないかな」
「そうねまずは女性たちで……その次にゴブリンキングね。彼女たちは出来るだけ早く助けてあげないと」
「……うん」
僕はリーリエの言葉に頷き、足を進めた。
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