第26話

「どういうことですか!?」


「な、何を言っているの!?」


「そ、それはどういう……」

 

 僕の発言に対し、三人は驚きの感情をあらわにする。


「僕はフォーエンス公爵家の長男にして次期当主。ずっと自由で楽しい冒険をしているわけにはいかないからね」


「えっ……いや、確かに、そう……」

 

 今にも僕に飛び掛かってきそうだった三人の勢いは僕の言葉に沈下する。


「教育に関しては問題ないけど……学園にはこの国の貴族である限り行かなきゃいけないし、自分の母を治しにもいかなきゃいけないしね」


「……わ、私は……利用、されただけ?」


「まぁ……そういう形になっちゃうかな」


 僕はぼそりと呟いたリーリエの言葉に頷く。


「ッ!!!」

 

「散々利用して、自分の目的が達した途端にパーティーから抜け出そうとしているんだし……でも、リーリエと過ごした時間は僕の中でも大切だったのは間違えないし、リーリエのことを僕は誰よりも大切な友人だと思っているよ」


「……ふへ?」


「レミア商会の我が国進出に関しても安心してもらっていいよ」


「……ん、んん?……いや、え?」


「わ、私の所有権は?」

 

 何故か僕の言葉に首をかしげているリーリエをよそにラレシアが僕への疑問を口にする。


「ラレシアの所有権は僕ではなく、パーティーに付属する者になっている。僕が抜ける以上その所有権はリーリエの方に行くかな」


「そう、ですか……」


 僕の言葉にリーリエが頷く。


「ふぅむ……我と同様であるな」

 

 キリエは真っ直ぐに僕の目から視線を


「え?な」

 

 キリエの言葉に対して、疑問の言葉を告げようとした僕の口は……突然、キリエの口に塞がれる。


「……ッ!?」


「んんぅあ!?」


「えっ……?」

 

 僕の口の中へとキリエの舌がねじ込まれ……そのまま一分ほど唾液を交換し合う。


「……んはぁ」

 

 僕の顔を掴むキリエが唇を離す……キリエの唇から伸びる糸がなまめかしい。


「ノーム。我らも汝を追ってノームの街に行ってもいいな?」


「……えっ?いや、良いけど……一緒に冒険者として動くことは出来ないけど、会うことなら全然」


「うむ。それで良い。ほら、何を呆けている。たがか接吻一つで。お迎えも来たようだぞ?」

 

「えっ……?」

 

 いきなりキスしてきておいて、それを些事だとするとんでもないキリエは迎えが来たと僕の背後を指さす。

 ……一応僕ってばファーストキスだったんですけど?


「えっ……?お姉ちゃん?」

 

 そして、そちらの方へと視線を送った僕は更に驚愕する。

 自分を探す捜索隊がいることは予想出来たことだし、テラリア卿経由で情報が渡って僕の居場所がバレていることは知っていた。

 キリエが指さした方向に僕の迎えがいることは何も驚きではない。

 だが、そのメンバーが予想外だった。


「……学園はどうしたの?」

 

 お姉ちゃんってば確か婚約者いなかったよね?

 

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