第20話

 姿形、纏う雰囲気に威圧感。

 そのどれもがガラリと変貌したサイクロプスの前に立つ僕とリーリエ。


「これは、私も戦った方が良いわね」

 

 リーリエは杖を置き、レイピアを構える。


「ふふっ。ゴブリンの巣を掃討した日を思い出すね」


「えぇ、そうね……もうだいぶ遠い記憶だわ」


「まだ一年ちょっとくらいしか経っていないけどね?」


「ここ最近の記憶が鮮烈過ぎるのよ」


「……僕は何も知ーらない。行くよッ!」

 

 僕は転移魔法を発動。

 リーリエから逃げるようにしてサイクロプスの背後を取った僕は二本の短剣で斬りかかる。


「ガァッ!」

  

 明らかに速度が上がり、体も軽やかになっているサイクロプスは滑らかな動きで背後の僕へと棍棒を振るう。


「……っと」

 

「凍りなさい」

 

 ギリギリのところでサイクロプスの棍棒を避けた僕に、魔法を発動させて氷魔法をぶつけるリーリエ。

 僕とリーリエは互いにヘイトを入れ替えながら器用に立ち回り、速度でサイクロプスを撹乱しながらサイクロプスを容赦なく削っていく。


「ガァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」


 サイクロプスとて為されるがままになっているわけではない。

 翻弄され続けるサイクロプスはリーリエよりも遥かに身体能力の高い僕を捕らえるの諦め、リーリエ一点狙いへと態度を変える。


「……ちょっと、不味いか?」

 

 リーリエのカバーしながら戦っているが……それでも完全にはカバーしきれない。

 僕がサイクロプスを削り、サイクロプスがリーリエを追い詰める。

 

「……あっ」

 

 氷魔法を使って戦うのが久しぶりだったことか祟ったのか、リーリエは致命的なところで足を滑らせ、サイクロプスへと致命的な隙を晒す。


「……ッ!!!」

 

 あまりにも致命的過ぎる隙を当然サイクロプスが見逃すはずもなく……。


「あがっ!?」


「えっ……?」

 

 サイクロプスの一撃がリーリエへと当たる直前に、僕が転移でリーリエの前に立って彼女をかばう。

 一撃たりともサイクロプスの攻撃を受けなかった僕であるが……この一撃が僕にどうしようもないほどのダメージを与える。


「かふっ」

 

 リーリエと共に吹き飛ばされた僕は抉られた腹より多くの血を流しながら、地面に倒れる。


「……良かった」

 

 そんな僕は土で汚れただけで傷を負っているわけではなさそうなリーリエを見て、一言声を漏らした。

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