第34話
火力不足感がちょっと否めないが、それでも問題なく冒険者として活動出来ている僕たち。
「……指名依頼ですか?」
「はい。そうです……この街の領主様からの指名依頼となっています」
僕がこの街に来てから早いことでもう一年。
とうとうこの街の領主から指名で依頼が舞い込んでくるほどの冒険者となっていた。
「どのような依頼でしょうか?」
「領主様の娘さんであるアレティア様と共にドラゴンを倒してほしいのだとか……」
「……貴族の娘、ですか」
領主の娘。
その単語を聞いた僕は思わず自身が大貴族の次期当主であるということは棚に上げて眉を顰める。
「その反応になってしまうのもわかりますが……」
僕の反応を見てギルドの受付嬢さんが苦笑しながら言葉を話す。
「領主様の娘はかなりの武闘派で、結構荒事にもなれているそうですよ?」
「……なるほど」
この世界には僕のようなイレギュラーもいる……この街の領主の娘さんが武闘派であってもそこまで不思議ではない、か?
いや、ないだろ。貴族だぞ?
「……むむ。これは実質断り不可能な依頼ですよね?」
「……ハハハ」
僕の言葉に対して受付嬢さんは苦笑で返す。
……僕の原作知識の中にもこの街の領主の娘のことはない。どんな人かもわからないし、不安なことしかないが……。
それでもこの街で生きていくのであれば街の領主の依頼を断ることは出来ない。
平民じゃ貴族にはどうあっても敵わないのだ……僕は平民じゃないんだけどね。
「申し訳ありませんが……受けていただけると……」
「わかりました。受けましょう」
僕は受付嬢さんの言葉に頷く。
「自分たちの力を見せてあげましょう」
「ありがとうございます!」
僕の言葉を聞いた受付嬢さんは笑顔で感謝の言葉を口にした。
■■■■■
「どうも初めまして。貴方たちが我と共に竜を殺す者ですね……ふふふ。この我に相応しき強者の気配が見えますよ」
片目に眼帯をつけ、魔法使いのローブを身に纏う彼女は僕たちを前にし、妙にかっこつけたポーズをとりながら不敵に笑う。
「あぁ……天に愛されたとした言いようのないようなこの運命的な出会い。今日この日は世界の運命を狂わせる一つの節目として歴史に刻まれるでしょう。あぁ、美しき太陽が輝く今日この日に出会えたことを感謝します。どうか、皆様。よろしくお願いします」
キャラ濃いの来たぁー。
僕が受けた依頼……領主の娘さんとの顔合わせの日。
その日に僕たちの前に現れた少女のキャラの濃さを前に僕たちは圧倒されたのだった。
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