第7話

 結局のところ、僕は三十分ほどキリエとラレシアのおもちゃになっていた。

 内臓が全て口からでろりとすべて出てしまいそうなほどの力で抱きしめられ続け、そのあとはキャッチボールのボールとなってシェイクされ、幾度も宙を舞い、地面を転がり、キリエとラレシアの二人の歓喜の涙に鼻水、唾で全身がぐちょぐちょになった……まだ僕が地球にいた頃、傘を忘れて雨の中をダッシュしたことを思い出す勢いである。


「お疲れ様」

 

 全身ぐちょぐちょの状態でリビングの椅子へと腰掛ける僕へとリーリエが紅茶を持ってきてくれる。


「……ありがとう」

 

 僕はリーリエへと感謝の言葉を口にし、持ってきてくれた紅茶で喉を潤す。


「……ごめんなさい。ちょっと、テンションがあがりすぎた」


「も、も、も、申し訳ありませんでした、と、とんでもない蛮行をしでかしてしまいましたぁ」


「全然気にしていないから大丈夫だよ、二人とも。突然の別れの後、長らく会うことの出来なかった僕に責任があるようなものだからね」

 

 僕は自分の前で正座するキリエとリーリエの二人にそう話す。


「そんなことにお風呂入ってきたら?貴方がおもちゃにされていっている間にお風呂を沸かして置いたわよ」

 

 そんな風に声をかける僕に対してリーリエがそう声をかけてきてくれる。


「……行ってきて良いの?」


「行きなさい」


「ありがとう……」

 

 僕は立ちあがり、お風呂の方へと向かった。

 

 ■■■■■


 風呂から上がり、さっぱりした僕。ほくほくの僕だ。

 そんな僕は着替えなんて当然持っているはずもなく、服がぐちょぐちょになったせいで着るものがなくなった僕はリーリエから服を借りた。


「……でっか」

 

 リーリエから借りたぶかぶかのシャツを一枚だけ羽織った僕は自分とリーリエの身長の差に絶望しながらみんなの待っているリビングの方へと戻る。


「ぶふっ!?」


「ふにゅぅあ!?」


「……ぁ、あぁ……あ」

 

「……どうした?」

 

 何故か僕の姿を見て、固まって突然鼻血を流し始める三人……え?どうした?


「……あっ、そいや。変身魔法解いちゃったけど別に良いよね?」


「だ、大丈夫よ」

 

 鼻から血を流し続けるリーリエは三人が固まった理由かな?って思った要因を口にした僕の言葉を否定する。


「ちょ!?本当に大丈夫!?」

 

 僕は血を流し続ける三人を前に動揺を隠すことなど出来るはずもなく、困惑と動揺を露わにし続けた。

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