第3話

 アマミヤ先生が礼をした。


「今日はよろしくお願いします」

「おう、冒険者が2人もいればそうそう事故は起こらないが、それでも危なくなったらすぐにハザマから出てくれ」

「「はい!」」


 ゴブリンのハザマは不人気だ。

 理由は死亡率が高く、ドロップ品の価格が安い為だ。

 だが、不人気であるがゆえのメリットもある。


 モンスターの駆除が間に合わない為無料で入れるのと、ゴブリンは最弱と言われている。

 初心者が倒しやすいのだ。


「もう1つ!魔力が切れたら動けなくなる!焦って魔力を使い切るのは危険だ、が、俺が見ている今、やってみたいならサポートする、どれだけ危険か体感するのもいいだろう」

「実戦で魔法を使ってみたいです」


 レンが手を挙げた。


「お!レンは雷魔法のスキルを持っていたな。よし、ゴブリンに使ってみろ」


 スキル持ちは1つだけメインのスキルを持っている。

 メインスキルが雷魔法の場合、サンダーやハイサンダーなどの雷系のスキルを覚えていくのだ。



「よろしくお願いします」


「ゴブリンのハザマは赤く光っている。光が濃くなるほどモンスターの最大出現数が多い。しばらくの間は、赤くて光が薄いハザマに入る事になる。じゃ、入るぞ」


 全員で魔法陣に乗り、全員で手を繋いだ。


「合図と共に入ると言ってくれ」


 ゴウタさんの合図と共に全員で声をあげる。

 

「「入る!!」」


 魔法陣に乗り、ハザマに入りたいと思う事でハザマにワープする。

 初心者は言葉にする事でその意思を持ちやすくなるのだ。

 辺りの景色が変わり、大きめのグラウンドサイズの空間に立っていた。


「ゴブリンが4体!」

「「ぐぎゃああああああ!」」


 子供と同じ程度の背丈で赤色の皮膚、ナイフを持ったモンスターが走って来た。

 ゴブリンは動きが素早い。

 体が赤い為ゴブリンより小鬼と言った方がしっくりくる。

 4体が迫って来ると恐怖を感じる。



「ユイ!やってみろ!」

「はい!魔法弓」


 ユイが弓矢を引く構えを取ると、魔法の弓矢が発生した。

 

 バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!


 ユイがゴブリン1体に2発ずつ矢を放つとゴブリンがすべて霧に変わった。

 戦い慣れている。

 多分、ゴウタさんと一緒にゴブリンのハザマに入った事があるのだろう。


「おおお!すげえ!」

「まあまあだな。ユイ、1撃でゴブリンを倒せるようにすればもっと楽になる」

「はい!」


「奥にゴブリンの拠点があるが、ボスを倒せばハザマは消えてしまう。ハザマを消すと罰金が取られるからボスは倒さずハザマを出るぞ」 


 奥には木で出来た砦の様な建物が建っていた。


 俺達は魔法陣に乗ってハザマを出た。

 

「基本これの繰り返しだ。時間が経てばモンスターはまた発生する。次はレンだな。雷を使う時は合図してくれ」

「はい!」


 次のハザマに入るとゴブリンが8体出てきた。


「多くね!?」

「レン、1人でやってみるか?」

「やります!」


 ゴウタさんはレンを信頼しているんだな。

 アマミヤ先生がレンの後ろで構えるがゴウタさんはレンの後ろに立つだけで構える様子が無い。


 レンは剣を抜いてゴブリン1体を袈裟斬りにして倒した。

 更に後ろに下がりながら包囲されないように横なぎに剣を振って2体目を倒した。


 危なげなく7体まで倒すとレンが叫んだ。


「雷を使います!雷撃!」


 レンの手から前方5メートルの扇状に雷が発生した。

 最後のゴブリンが雷を受けて倒れた。


「おお!勇者っぽい!」


 多分、引きつけて雷撃を放てば一気にゴブリンを倒せただろう。

 でも、安全を優先したんだな。


 レンを見るとだらだらと汗をかいていた。

 魔力の消費が激しいのか。


「いいな、立ち回りがいい」

「キイロは戦闘訓練を受けていましたから」

「立ち回りをメインに訓練を受けました」

「いいぞ、ゴブリンに囲まれれば危険だ。1対1を何度も繰り返すような戦いは最高のゴブリン対策だ。次はフトシだな」


 レンとユイは中学の時に戦闘訓練を受けている、でも俺は受けていない。

 ゴウタさんが俺を見てニヤッと笑った。


「うわ!やりにくい!勇者レンの後か!」

「勇者じゃないよ」

「はっはっは!うまく出来なくてもいいんだ。やってみろ」


 みんなで次のハザマに入った。


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